【シリーズ】原子力発電「支えの主役」関連産業編(3) 日本ギア工業 バルブ駆動装置「リミトルク」 米国との技術提携 安全・信頼性維持のため 幾つもの規格認証試験

本シリーズも回を重ね、これまでに、原子力エネルギー利用を「支える」幾多の企業たち、その持ち前の技術力が産み出す製品、サービス、そして、これに取り組む各社の熱意に密着し、その実態を紹介してきた。今回、取り上げる日本ギア工業は、各種プラントのバルブ駆動装置(アクチュエータ)を手掛けており、特に原子力では、高い安全性と信頼性の要求に応えるべく、幾つもの試験を実施しており、原子力を支える「影の力」といえる。

神奈川県・藤沢市に本社を置く日本ギア工業は、その名のごとく、自動車用歯車の専門メーカーとして1938年に創業、各種産業機械に組み込まれる歯車の製造で実績を積んできたが、60年代からは、バルブ、ゲートなどをコントロールするバルブアクチュエータにも事業領域を拡げ、産業開発だけでなく、上下水道など生活に身近な部分でも、人々の活動を支えてきた。同社のバルブアクチュエータは、幅広い分野で数多く活躍している。

日本ギア工業の高性能バルブアクチュエータ、主力ブランド「リミトルク」はもともと、米国・リミトルク社(現フローサーブ社)の技術だ。63年、日本ギア工業が当時のフィラデルフィア社と、全機種の「リミトルク」について技術提携契約を結び、国内生産を開始、65年には、電動弁バルブアクチュエータ「SMB」型を、東京都の朝霞浄水場に350台納入し、技術導入から早い時期に、国産「リミトルク」が発電所、上下水道、石油製油所等の各基幹産業に広く採用されるに至った。

この「SMB」型は、原子力発電所の格納容器内仕様として確証された世界初のアクチュエータで、マイナーチェンジをしながら現在も生産され続けている「リミトルク」を代表する機種となっている。「リミトルク」には多機種あるが、特に、「SMB」型は、堅牢な構造で、耐圧防爆、耐放射線、耐寒、耐水、防蝕など、過酷な環境下でも高性能を発揮できるよう、設計がなされており、その品質は、国内外で高い評価と信頼を得ている。

「うちの製品は他社の機器に組み込まれて使用されるわけですから」

取材に応じてくれた技術陣は言う。日本ギア工業の製品は、それ自体、確かに目にする機会は少ないだろう。しかしながら、機器の安全性と信頼性の向上に関して、同社は怠りない。米国・電気電子技術者協会による規格認定の実証試験のため、渡米することもあるという。熱劣化試験、圧力劣化試験、機械劣化試験、放射線劣化試験、振動劣化試験、耐震模擬試験、放射線暴露試験、蒸気暴露試験など、規格が改定されれば、追加試験や解析が要求されることもある。特に高度な認証試験内容では、国内では十分な設備がないことが1つのネックになっているようだ。

日本ギア工業は、福島、新潟、静岡、福井など、原子力発電所近隣に事業所を置き、製品の機能維持体制を固めているが、多年にわたるメンテナンスの経験と実績を集約し、同社は、電動弁の健全性を短時間で定量的に確認できる診断サービス「MAC(Motor Actuator Characterizer)診断」を開発した。これは、国内原子力発電所の全電動弁に対応可能で、ヒューマンエラーの防止、定検期間短縮、コスト削減が図られ、多くの診断実績を有している。   (特別取材班)


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