【原子力発電「支えの主役」】― 関連産業編 C 宇徳 復水配管交換で革新技術考案 工夫と改善で「重量物の宇徳」を確立

1969年5月16日――未明から始まった福島原子力発電所1号機(東京電力、現福島第一1号機)の圧力容器搬入。ジンポールと呼ばれる700トンクラスの吊り上げ装置を使い、船で運ばれてきた465トンもの圧力容器を吊上げ、コロ曳きで搬入する作業は、安全を預かる当時の関係者にとって緊張の連続であったという。

宇徳が原子力に本格的に関わったのは、この福島原子力発電所1号機の建設作業からであった。当時防波堤が未整備であったため、波の影響を受けない安定した「接岸荷役用作業架台」を同社が考案し採用。安定した架台は、重量物搬入作業の安全と計画的な実施に大きな役割を果たした。

こうした工夫と改善の積み重ねは、現在まで脈々と受け継がれ、同社の「重量物の宇徳」ブランドをゆるぎないものにしている。最近では、福島第一6号機の大型復水配管交換作業で空気浮上式のキャリアー(AERO CARRIER)を開発し、狭い作業場所でも自在に重量物を運搬できる技術を考案。従来技術では相当に時間と手間がかかるような大掛かりな交換作業を定期検査期間に完了させた。このキャリアーは前後左右や平行移動、旋回など自在に、かつ正確にコントロールできるので、原子力ばかりでなく火力発電所など、狭隘な現場での重量物運搬に威力を発揮できるという。

現場経験の深さ、重量物運搬の技術力・ノウハウに、工夫と改善を加味した現場提案力が同社の強みとなっている。「顧客のニーズを受け、現場調査から設計、作業計画立案にあたり、設計などを受け持つ東京支社と現場との密接な連携は欠かせません」(山ア・東京支社プラント工事部長)。

また、現場での経験と実績をかわれて、異物混入防止のため使用済み燃料プール等の周囲に設置される手すりの製作と据付を受注した。「デザイン性も考慮して工夫しました。客先主管グループ殿の指導を仰ぎながら、苦心の作となりましたが、好評を得ています」(岩崎・東京支社電力営業部長)。ニーズをきめ細かく反映し、現場にあわせた工夫が評価され、その後も追加して受注した。

同社創業の歴史は明治にさかのぼる。明治末から大正年間には水力設備の水揚げなど重量物の輸送は得意な分野だった。戦前、戦後の混乱から復興、まさに同社は、近代日本の歴史の荒波を乗り越え、港湾運送・物流・プラントの3事業を中心とする事業基盤を確立して現在に至る。

原子力分野も実績を重ねて事業の柱に育成した。青森地区、宮城地区、福島地区、新潟地区など主要な原子力発電所が所在する地点に事業所を設け、核燃料の運搬(新燃料、使用済み燃料)や、プラントの大型機器の運搬・据付、また定期検査での機器の交換作業など事業の手をひろげている。

1983年には、イタリア・コメット社製の「スーパーキャリアT」(総積載能力が600トン・6軸車が4台)を導入し、それまでコロ曳きで1週間以上もかけて構内輸送していた原子力・火力発電所の超重量物機器類がわずか数時間で安全に輸送できる設備を整え、重量物輸送の歴史に新境地を拓いた。以降も輸送・据付作業の安全と効率化に向けて積極的に特殊車両・特殊機材を開発・導入し、さまざまな現場にこうした輸送用機器を組み合わせて顧客のニーズに応えている。

“全ての事業領域での安全確保の徹底と環境保全の努力”は企業理念の柱のひとつ。

2001年には、福島、女川、柏崎など主だった事業所でISO9001を取得、最新の品質マネジメントシステムを導入した。また「社内で技能コンペを開催したり、日ごろから玉掛け作業などの基本をしっかり身につけるよう努めています」(同前・山ア氏)。

燃料関連でも組織横断のチームを編成し、情報共有しつつ改善点を洗い出すなど品質向上につとめている。

スケジュールどおりにモノを動かし、現場を支える重要な役割を輸送事業が担っている。原子力発電分野をはじめとして、各産業分野の血脈を日々支えるために、同社は人と技術に磨きをかけて安全品質をつくりこみ、工夫と改善で付加価値を高める努力を惜しまない。その確かな足取りは、来年、創業から120年目の歴史を刻む。

(特別取材班)


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで