【シリーズ】原子力発電「支えの主役」関連産業編(5) 千代田テクノル 放射線の専門サービス多彩に ガラスバッジ線量計など 高い信頼で安心を提供 「顧客と共に」が信条

「放射線の有用性を最大限に引き出し、社会に貢献することが基本です」(細田敏和社長=写真)。線量測定サービスの提供を起点として、放射線の利用と防護の両面で多彩な事業を展開する同社。工学・医学・農学・各種産業等あらゆる分野で使用される放射線源の製造・販売、がんや腫瘍を治療するための放射線医療機器の輸入販売まで、事業範囲は幅広い。宇宙飛行士の放射線被ばくを計る線量計も手がけ、活躍の舞台はすでに宇宙にも広がっている。

創業から50年を経て、顧客との信頼関係は厚い。

「研究者や原子力施設の現場で働く方々と親しみをもってスタッフの一員として、お手伝いをしたいと思っています」(同社長)という通り、人と人とのつながりを大切にする企業姿勢は一貫している。営業網は、北海道・泊から鹿児島の薩摩川内まで全国展開。顧客の目線で、そのニーズにきめ細かく対応できるサービス体制がウリだ。こうした充実の体制のもと放射線測定サービスでは、個人被ばく測定モニタ「ガラスバッジ」(=写真)を他に先駆けて2000年10月から上市し、いまや国内24万人の放射線作業従事者に使用される国内トップのシェアを誇る主力製品へと育成した。ガラスバッジは従来のフイルムバッジの検出能力を飛躍的に向上させるとともに感度安定性もよい。また繰り返し使えるうえ、「個人線量測定」と「環境線量測定」の双方に対応できるなどメリットが多い。加えて同社はガラスバッジをモニタリング・サービスと一体となった統合システムとして捉え、新鋭のシステム「MOSV」を導入。正確な測定から処理時間の大幅短縮、顧客への報告までのリードタイムも飛躍的に短縮した。一貫したサービスの提供により“高い信頼”を形にして提供している。2006年7月には仏放射線防護・原子力安全放射線測定研究所(IRSN)から45万個のガラスバッジとその放射線測定システムの受注を獲得、原子力先進国からも同社技術が認められた。

技術に対する信頼性は、各企業がもつ測定器が正確であるかを国家標準と比べて校正する国際MRA対応の認定事業者として民間企業唯一、同社が認められていることにも示されている。1995年12月に計量法の校正事業者、同年12月に国際対応(ILAC―MRA)校正登録事業者として、当時の通産大臣から認定を受け、その後、校正結果が国際的に通用するライセンス(ILAC―MRA)を取得し、茨城県の同社大洗研究所で測定器の校正等の事業を行っている。すなわち、同社は校正の国際免許証を持っているようなものだ。校正のワン・ストップ・テスティング、同社が校正すればさらに校正を求められることはない。これも、最高の技術を目指す同社の姿勢の表れだ。「信頼が一番大切な事業ですから」(同社長)と力を入れる。充実した施設は、アジア諸国からも引合があり頼りにされている。

医療分野は、がん治療装置など国内市場に導入しており、高線量率密封小線源治療装置(本社オランダNucletron社製品)は国内市場の7割を超える装置となっている。また、サイバーナイフUと呼ばれる装置を米国から導入、すでに国内21か所に納め稼動している。08年に体幹部適用拡大の薬事承認を受け、さらなる市場拡大が期待される。このサイバーナイフはエックス線を患者さんの病巣部に集光照射し“光のメス“でマニピュレータという腕と組み合わせ、繊細かつ正確に病巣を治療する装置。通院治療可能で、海外では小児にも適用できるなど患者負担が少ないところが特長だ。

世界的な原子力回帰の動きのなかで、同社はすでにアジア諸国、欧米などの海外市場に製品普及をはかっている。中国市場への普及にも意欲的だ。同社主催でガラスバッジの利用に関する国際ワークショップも開催している。民間としては負担ともなるが、正しく放射線を取り扱ってもらうための安全思想や意識向上のために、との思いもあって開催している。

「放射線は身近なもの、よく知ってもらうことが大切です」(同社長)。そのため、従来から国内でも各地の放射線技師会などに講師を派遣し安全教育を行っているほか、社会の理解促進のための教材も手がけている。

本社1階のロビーで、月1回ペースで開いているチャリティコンサートは15年続く。生演奏に、たびたび立ち見がでるほど定着した活動に。細田社長自身が音楽を愛するひとりだ。

よいサービス(奉仕)を顧客や広く社会に提供し、共に苦楽を分かち合うことの大切さ、楽しさを知る会社。それは音楽を愛する心にも通底する。同社の強さと魅力の原点は、そのあたりに見出せるのかもしれない。    (特別取材班) (「支えの主役」関連産業編シリーズ終り)


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