原子力協力覚書を締結 ロシア国営企業とベトナムEVN

ベトナム電力グループ(EVN)とロシアの総合原子力企業であるロスアトム社は12月15日、ベトナム初の原子力発電所の建設協力に関する了解覚書(MOU)を締結した。

これはロシアを公式訪問していたベトナムのグェン・タン・ズン首相がV.プーチン首相と会見後、原油・天然ガス部門や軍事部門など、両国が今後の協力関係を強化していくために調印した複数のMOUの1つ。プーチン首相は声明文の中で、「今後、この協定により民生用原子力産業などの有望な分野で本格的な友好関係が築かれるだろう。我々は2020年までに原子力産業を発展させるというベトナムの国家計画を支援していく用意がある」と述べた。ズン首相も、「ベトナムは必要な基準を遵守しつつ初号機を建設するための支援者として正式にロシアを招いた」と明言。プーチン首相がベトナム側の要請すべてを考慮することに同意するとともに、ロシアの関係省庁に協力への指示を出したことを明らかにした。

ベトナムでは中南部ニン・トゥアン省の2サイトで各100万kW級原子炉2基、合計400万kWの初号機を2020年に運開させることを目指して準備を進めていた。07年にはEVN内に原子力発電専門組織を設置し、EVNを第1、第2サイトの事業主体に決定。昨年6月の原子力法成立によって導入のための法的整備を完了したほか、昨年11月には同国国会がプレFSの結果を承認、同国でのまず第1サイトでの2基分の原子炉建設が正式に決定していた。

日本は2000年に原産協会がVAEC(現VAEI=ベトナム原子力機構)とMOUを締結し、日越協力連絡委員会を設置して同国の原子力導入支援を開始。02年には日本の原子力委員会が中心となって、人材養成で本格的な協力を開始したほか、プレFS支援するなど大きく貢献してきた。

11月7日の鳩山首相との会談では、@先進性と安全性で検証済みの高い技術A資金支援B核燃料の安定供給C人材育成面での協力――を協力国の条件とすることをズン首相が表明していた。

今回のロシアとの原子力発電協力が大きく前面に出た背景には、ベトナム戦争以来、後ろ盾となってきたロシアとの関係を対中国戦略と含めて再構築する意味が強いと思われる。日本とは直前の12日、ハノイとホーチミンを結ぶ南北高速鉄道に日本の新幹線方式導入を表明しており、経済開発のパートナー選びのバランスを取っているとの見方も出ている。


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