日豪の「核不拡散国際委員会」 燃料サイクル多国間管理など勧告

日本と豪州の共同イニシアチブである「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」は12月15日、核廃絶に向けた手順を示すロードマップとして取りまとめた報告書を、共同議長を務めた川口順子元外務大臣らが総理官邸で鳩山総理およびK.ラッド豪州首相宛てに提出した。

今年5月に核不拡散条約(NPT)運用再検討会議がニューヨークで開催されるのに際し、ICNNDは麻生総理時代の08年7月、日豪が協力して具体的な勧告等を提示するとの目的で両国首脳会談で立ち上げられた。これまでに世界各地で6回の会合を開催したほか、関係NGOとの意見交換会も交えて議論を抽出。報告書には、「二〇二五年までに世界の核弾頭数を2000発以下にする」などの勧告を盛り込んだが、参加NGO等からは「計画があまりに悠長で兵器をゼロにするための道筋と時間枠が曖昧」との批判もある。しかし、同報告書はあくまでも「現実」を踏まえた勧告であり、核保有国に先制不使用宣言を求めている部分などは評価できるかもしれない。

「世界の政策立案者のための実践的な計画」という副題が付けられた同報告書は、最終目標である核廃絶を達成する前に、核弾頭数を現在の10%程度まで削減することを中期目標とする段階的アプローチを提唱。すべての核武装国が遅くとも2025年までに明確な「先制不使用」宣言を行うべきだと勧告しているほか、そこまで進む準備ができていない場合は、核兵器保有の目的を唯一、自国および同盟国に対する他国の核兵器使用抑止とすべきだとしている。また、包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名や批准を促すには、まず米国による批准が極めて重要であり、軍縮と核不拡散の双方の取組みに対する重要な推進力になると指摘した。

民生用原子力への対応に関しては、原子力施設の設計と運営において政府と産業界が制度的、技術的な施策を通じて拡散抵抗性を推進すべきだと指摘。そのための主要施策として次のような項目を挙げた。すなわち、@3S(保障措置、安全、セキュリティ)の重要性認識を高めるなど、G8洞爺湖サミットで発表された原子力の基盤整備に関する国際協力のためのイニシアチブを支援A現行の再処理方式を回避できるよう使用済み燃料処理のための新しい技術を開発Bプルトニウムの再利用拡大および高速炉の導入は拡散の危険を避ける形で追求C使用済み燃料を燃料供給者が回収する取り決め等により多数国での個別蓄積を回避D燃料バンクのほか、濃縮、再処理、使用済み燃料貯蔵施設など、燃料サイクルに関わる機微な活動について多数国間による検証・管理を強く推し進める−−など。

同報告書の勧告ついて岡田外相は、政府の意見としてまとめたものではないが、参考にすべき多くの点が含まれていると評価。2010年にはNPT運用検討会議のほか、オバマ米大統領の主催で核削減に関するサミットも予定されている点に触れ、「場合によっては日豪両国に米国を加えて、この報告書をベースに世界に向けた新しい政策提言を作り上げたい」と述べた。また、今年の後半に向け日本が何らかの国際会議を主催する可能性を示唆し、核廃絶に向けた確実なステップを進める役割を協力して進めて行きたいとしている。


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