第10回を迎えたFNCA大臣級会合 「深まるFNCAのアジア原子力協力」 FNCA日本コーディネーター 町 末男

菅副首相・科学技術政策担当大臣の開会挨拶で第10回記念FNCA大臣級会合が、12月16日に東京で開幕した。バングラデシュ、マレーシア、フィリピンから科学技術大臣、中国は国家原子能機構主任、韓国からは副大臣など10か国の大臣級代表により熱心な議論が行われた。菅大臣はアジア地域で原子力利用の拡大が予想される中でFNCAの重要性が増していると述べられた。

■原子力発電導入の積極的な取り組み進む
〈ベトナム原子力発電建設を国会承認〉

ベトナムのタン原子力委員長は11月25日国会が原子力発電建設を可決し、14年に4基400万kWの建設を開始、20年の運転が確定したと述べた。タイのスチンダ科学技術事務次官は20〜21年2基200万kWの運転を目指して原子力発電推進のオフィス(NPPDO)を設置し、基盤整備計画とFSを実施中と述べた。インドネシアのフィディ・ハストォ原子力庁(BATAN)長官は原子力発電建設推進機関を10年に設立、18〜19年に初号機の運転開始を目指すとしている。マレーシアのオンキリ科学技術・革新大臣は、09年7月原子力エネルギーを燃料の選択肢の1つとして正式に位置付けたが、原子力発電計画は決定されていない、決定は、「10〜30年のエネルギー政策」策定の中でのエネルギー・ミックスの評価結果によると述べている。すでに原子力発電プロジェクト機関(NEPIO)を設置し広範囲な評価を開始したという。フィリピンのアラバストロ科学技術大臣は、86年に完成したが運転されていないバターンの原子力発電所再稼働の議案が国会に提案されており、承認されれば、原子力発電プログラムは大きく進むことになろうと期待を述べている。バングラデシュのオスマン科学・情報・通信大臣は貧困の削減のために、2021年2000万kWの発電容量達成を目指し、そのため原子力発電の早期建設は不可欠と述べている。

〈原子力発電導入のために経験を共有する〉

初めて原子力発電を導入しようとする6か国は、日本、韓国、中国の経験を学ぶことによって、効率的に計画を進め、安全を確保した原子力発電プロジェクトを推進したいと、協力を強く期待している。FNCAでは04年原子力エネルギーのパネルを立ち上げ、アジアにおける原子力発電の必要性を認識し、07〜08年には人材養成と安全確保に関する情報を共有した。さらに、09〜11年で「原子力発電の基盤整備への取り組み」をテーマとするパネルを開始している。今回は原子力発電に関し、特に地震、津波、火山などの天災に備えた対策、および核セキュリティーと核不拡散にむけた人材養成について経験・情報を新たに共有することに合意した。

07年発出した共同声明で「原子力発電をクリーン開発メカニズム(CDM)に含めるべきである」という提言に関しては途上国における原子力発電建設の促進に極めて重要であることから、協力してCOPの議論にて主張することが合意された。

〈原子力発電導入に向けた人材養成とFNCA〉

原子力発電導入実現のための人材の養成について日本に対する期待は大きい。日本は原子力研究者交流制度、アジア原子力技術教育ネットワーク(ANENT)などを活用し、発電炉の設計、運転、維持、放射線防護、工学安全、核不拡散に必要な基礎的な知識・経験を持つ人材の育成に協力する意向。

「より良い健康と持続的農業に役立つ」放射線利用に注目

FNCAが進めている子宮頸がん、頭頸部がんの放射線治療、核医学診断のPETプロジェクトでは各国のニーズにあった目に見える成果を挙げている。農業分野では耐病性バナナ、耐虫性ランの新品種の開発で実用化に近い結果がでている。また、放射線を利用したバイオ肥料もインドネシア、フィリピンなどで実用化が達成され、他の国にも広がりつつある。天然高分子を原料として放射線照射法で製造した植物の生長促進剤の試験が各国で進み良い成績がでつつある。これらの方法で化学肥料の使用量を減らし環境に優しい農業を可能にする。

〈フィリピン「原子力技術の実用化促進フォーラム」を提案〉

フィリピンのアラバストロ大臣は社会・経済の発展に有用な原子力技術の実用化を進めるため、経験を共有し戦略について議論するフォーラムのフィリピンでの開催を提案した。

〈マレーシア「ビジネスフォーラム」を提案〉

政府のFNCA大臣級会合の政策議論を補う形で、産業界が共通して関心を持つ「原子力エネルギー産業利用(発電と非発電)」について情報を交換し、協力の可能性を話し合う場として「ビジネスフォーラム」を設置し、大臣級会合と並行して開催することをオンキリ大臣が提案した。

■日本「研究炉利用とアイソトープ供給のアジア地域連携」を提案

タイ、ベトナム、マレーシアでは中・大型の研究炉の建設計画が検討されている。建設コストが極めて大きいため財政的な負担となる。建設計画は日本、韓国など経験のある国の協力をえて、利用に合致し低コストの設計を行うことが望ましい。現在運転中の炉の共同利用を検討する事も意義がある。また、カナダからの核医学用Mo‐99の供給に不安があることから、アジアの中で相互供給の枠組みを考えることも必要である。これらの課題を検討するパネルの設置を日本が提案し賛成を得た。

■むすび

各国の熱意が表れた活発な議論の要約と合意された提案を紹介したが、これらのフォローアップは10年3月のコーディネーター会合で実現方策を議論する。


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