理研 重イオンビーム照射で いつでも咲く新品種桜

理化学研究所の生物照射チームはこのほど、重イオンビームで、いつでも花が咲く四季咲きサクラの新品種作出に成功した。この新品種は、研究チームの属する仁科加速器研究センターにちなみ昨年12月、「仁科乙女」(=写真左)として、農林水産省に品種登録された。

理研ではこれまでも、重イオンビーム照射により、ダリア、ペチュニア、バーベナなど、15種類の園芸植物の市販新品種の育成に成功しており、07年に登録された黄色いサクラ「仁科蔵王」もその1つだ。

今回、育種に成功した「仁科乙女」は、栽培が容易とされる既存種「山形13系敬翁桜」に、理研RIビームファクトリーのリングサイクロトロンで加速した炭素イオンを10Gy照射し、06年より栽培・増殖を行い、獲得された。

サクラは一般に、夏に形成された花芽が晩秋に休眠し、冬の寒さにさらされて休眠打破することで、早春に花芽が生長し、開花に至る。新品種「仁科乙女」では、低温にさらされなくても、いつでも花を咲かせることができるほか、低温にさらして4月に一斉開花させると、「敬翁桜」の約3倍量の花が咲く。野外栽培による開花時期は、4〜5月と10〜11月の二季咲きだが、温室栽培でも開花するため、いつでも花を咲かせることができる。

「仁科乙女」は今後、山形県内の農家で花苗増産を行い、3月にも販売が開始される予定だ。


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