ボーグル計画に83億ドル 米政府、原子力に初めて融資保証適用

米国のB.オバマ大統領は16日、サザン社がジョージア州で進めているアルビン W.ボーグル原子力発電所3、4号機建設計画に対して、83億3000万ドルの政府融資保証を約束した。米エネルギー省(DOE)が2005年エネルギー政策法に基づいて原子炉新設に対する融資保証枠185億ドルを設定して以来、実際の適用が決まった最初のプロジェクトとなった。米国では昨年末までに28基の新設計画で建設・運転一括認可(COL)が申請される一方、財務コストの調達がネックとなって中断を余儀なくされる計画も出始めていた。ボーグル計画への融資保証適用により、米国で約30年ぶりの原子炉建設がようやく現実のものとなる。

今回の発表は、大統領がメリーランド州の国際電気労働者組合(IBEW)を訪問(=写真)した際に行われており、DOEのS.チュー長官および米原子力規制委員会(NRC)のG.ヤツコ委員長も同行した。

大統領は演説の中でまず、クリーン・エネルギー事業による雇用創出と低炭素経済への移行のためにオバマ政権が実施する新たな投資計画について説明。30年ぶりの新規原子炉建設によって今後数年間に約800名分の高給の正規雇用が生み出されると指摘した。そして、日本とフランスでは長期にわたって原子力事業に多額の投資がなされてきたほか、中国や韓国、インドを含め世界中で新たに56基が建設中という事実に言及。「原子力にしろ、太陽光にしろ、将来の技術への投資を怠れば、米国は遅れを取り、それらを輸入する側に回る。この米国で生み出されるはずだった雇用がほかの国で創出される、そのような将来は受入れられない」と言明した。

また、原子炉1基で年間1600万トンのCO排出が抑制されるなど、その温室効果ガス削減効果についても触れ、原子力増強の必要性を改めて強調。こうした理由から、予算教書で融資保証枠を現行の3倍に増やすよう議会に提案したと説明するとともに、同政権が早期成立を目指す包括的気候変動対策法案成立に向けて超党派の協力を訴えた。

   ◇  ◇   

サザン社の子会社であるサザン・ニュークリア社は2006年8月、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000・2基の設置を想定したボーグル3、4号機建設計画で事前サイト許可(ESP)を米原子力規制委員会に申請したほか、翌07年8月に部分的な建設準備作業の実施許可(LWA)、08年3月にはCOLを申請。ESPとLWAはすでに昨年9月に発給され、WH社とはエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を締結した。COLが発給され次第着工し、2016年と17年の運転開始を予定している。

同計画への融資保証額83億3000万ドルは出資会社間で配分される予定で、サザン社の子会社のジョージア・パワー社に34億6000万ドル、オーグルソープ社に30億7000万ドル、地元のジョージア州営電力に18億ドルになると伝えられている。

なお、WH社を傘下に置く東芝は今回の米政府の発表を歓迎。「雇用創出や経済効果など、原子力の有効性が高く評価されたことによると認識している」とコメントした。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで