経産省 「産業構造ビジョン」策定へ アジア諸国の成長見据え 各界の代表集め審議開始

経済産業省の産業構造審議会は2月25日、産業競争力部会(部会長=伊藤元重・東京大学経済学研究科教授)の初会合を開催した(=写真)。昨年末に政府が示した成長戦略基本方針を踏まえ、「産業構造ビジョン」の策定に向け審議を行うもの。原子力発電、高速鉄道など、成長新興国のインフラ開拓への対応を含め、日本産業の今後のあり方を示す戦略として、5月を目途に報告書を取りまとめる。

冒頭、直嶋正行大臣が挨拶に立ち、「アジアの発展、イノベーションを考えると、日本の産業構造にも大きな影響」などと述べ、新興国の経済成長を支えるべく日本経済の競争力を強化し、それを日本自身の成長にもつなげていく必要を強調した。また、これまでの自動車、エレクトロニクスに極度に依存した産業構造、縦割り行政などを憂慮した上、今後の日本の感性を活かした産業育成、世界で競争できるグローバルな人材育成、官民の役割についても、積極的な議論がなされることを委員らに期待した。

日本の産業を巡る現状と課題について、事務局より、他の先進諸国との経済指標の比較を示し説明、日本経済の行き詰まり状況を掘り起こした上で、「今後、日本は何で稼ぎ、雇用していくのか」問題を提起した。また、諸外国の産業政策に関連し、大規模インフラプロジェクト獲得の例として、UAE原子力発電所における韓国受注をあげ、(1)受注体制(2)価格(3)首脳外交――について、その勝因を分析し、官民一体となった取組みの必要を述べた。

続いて、小川紘一・東大知的資産経営講座教授がプレゼンテーションを行い、「オープン標準化がもたらす国際分業」の中で、韓国のデジタル製品が急激にGDPを伸ばしているとした上、日本では、デジタルカメラを例に海外市場における強みを、研究開発による付加価値創出でさらに強化する必要を指摘した。

委員からは、「少子高齢化は日本の国力を落とす。国全体として財政問題もキチンとしないと成長はありえない」(勝俣恒久・東京電力会長)、「研究開発にかかる民間の負担が少なくなるように」(西田厚聰・東芝会長)といった政府への要望や、「韓国、台湾は元々国内市場が小さいため、はなから世界市場で戦うことを前提とした組織となっている」(秋山咲恵・サキコーポレーション社長)など、産業構造の本質に関する声もあった。

さらに、人材育成に関して、「大学の教育と職業との接続がキチンとできていない」(逢見直人・日本労働組合総連合会副事務局長)、医療機器開発では、「病院と企業とが一体となった取組を」(土屋了介・国立がんセンター中央病院長)、また、消費者の立場から「安心して長く使えるものづくりを」(青山理恵子・消費生活アドバイザー協会副会長)、金融業界から「総額1400兆円の個人資産をどう運用するか」(佐藤康博・みずほコーポレート銀行頭取)といった意見もあった。

次回第2回は3月26日に、「成長新興国市場のインフラ需要・システム需要に対応できるか?――水ビジネス、原子力、高速鉄道」などについて審議する。


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