【国家成長戦略 「原子力」を見据える 経済産業大臣政務官 近藤 洋介氏に聞く 国内課題「逃げず」に挑戦 国家間競争に「勝ちきる」戦略

―国家成長戦略における原子力の位置づけで、経産省の取り組みは。

近藤政務官 6月の政府全体の新成長戦略に向け「エネルギー・環境大国」を目指す中で、日本の強みとして省エネ、新エネ技術等と並び原子力発電も明記されている。経産省ではそれを踏まえ、5月をめどに日本の新産業のあり方を示す「産業構造ビジョン」策定とエネルギー基本計画見直し作業を一体的に議論しているが、具体策としてアジア市場を重点に水ビジネス、鉄道、スマートグリッド、原子力等について「システム輸出」の形で新興市場のインフラ開拓ニーズに対応していくことが新戦略の1つの柱になる。

とりわけ原子力は、国家戦略の中でも、環境・経済・途上国協力を鼎立させる「切り札」あるいは「主役」なのか等、位置づけのキャッチフレーズに迷う向きもある。だが、すでにそうした言葉の遊びの時代は過ぎ、問題は「何をするか」の具体論の世界に移っている。

―日本は原子力先進国として優れた技術と実績が強みといわれながら昨年末以来、UAEとベトナムのプラント商談で韓国とロシアに相次いで敗退したショックをどう受け止め、対応するのか。

近藤政務官 世界で原子力発電プラントの需要は急拡大、激烈な受注競争が展開されており、ここで日本が勝ち切れる¢フ制を確立したい。しかし今回、技術だけ強くても商談には勝てないという現実も学んだ。原子力はプラントだけでなく燃料供給から発電所の運転・保守、人材確保、バックエンドまでワンセットでそろえる必要もある。かつ、民間企業だけの力では限界があり、国も前面に出て官民の総力を結集できる「オールジャパン」体制で取り組むことが不可欠だ。

ただ、「オールジャパン」というのは、海外競合国のように日本の3プラントメーカーが単純に1社に統合すればいいというものではなく、逆に3社そろって参加することだとも思わない。「皆仲よく、行儀よく」は究極の無責任体制に通じる。原子力プラント市場は、米欧先進国あるいは中国・インドのような発展途上大国や、ベトナムなど原子力をまったく新規に導入する途上国さまざまで、ニーズや国内事情は実にさまざまなだけに、案件ごとにきめ細かな戦略を立て、一番有利な企業グループで対抗すべきだ。同時にその際、肝心なことはプラントメーカーだけでなく、電力会社や商社も加わり一気通貫≠ニし、政府も支援してようやく日本の総合力を発揮できる。

―その「オールジャパン」体制を取り仕切る司令塔はどこか。

近藤政務官 その前に、「オールジャパン」と言っても日本企業だけで固まる必要はない。現に東芝・WHや日立・GEのような海外メーカーとの連携関係もできており、今後もいろいろなケースが予想されるだけにあまり決め打ちして考えずに、柔軟な発想で日本の力を結集できる体制を取ればいい。

それも含めて、商談獲得に向けた「オールジャパン」の采配をどこが取るかもケースバイケースながら、現実に各国の事情に精通し国内メーカー、電力、商社など産業界と密接な関係を築いている資源エネルギー庁の存在・役割は大きいと思う。また、現在検討中の新規導入国における原子力プロジェクト受注のための新会社が窓口となるのかも1つのテストケースであり、固定的に考えているわけではない。

―原子力についての鳩山イニシアチブ(途上国協力)について。

近藤政務官 日本は唯一の被爆国として原子力の安全確保と平和利用に徹する十字架を背負い、非核保有国として唯一再処理も認められてきた。こうした核不拡散の下に積み上げてきた安全かつ平和利用を前提とした原子力技術を世界に広めることは日本の大事な国際貢献だと思う。核兵器廃絶を主導し、原子力発電推進に舵を切った米国オバマ政権と手を携えながら、世界レベルの核燃料供給保証でも日本が先兵になるべきであり、責務を負っている。

―原子力が国家成長戦略の桧舞台に上がる一方、国内の足元固めはどうか。

近藤政務官 国内の課題は多く、稼働率の低さも海外のプラント商談に敗退した一因となった。理由はさまざまながら、民主党政権はこうした原子力にかかわる課題から決して逃げずに取り組みたい。従来政権で「分かってはいてもできなかったこと」に真正面から挑戦し、政治主導で1つひとつ解決していかないと国内状況は改善できないし、国際展開・貢献も覚束ない。   (編集顧問 中 英昌


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