【第43回原産年次大会】 特別講演 天野之弥・国際原子力機関(IAEA)事務局長「グローバル・イシューの解決に取り組むIAEA」現在、IAEAは主に(1)原子力発電(2)原子力安全とセキュリティ(3)原子力の応用技術(4)核不拡散――に取り組んでいる。 原子力発電について、IAEAとしては新規導入国やさらなる利用拡大をめざす国や地域に対し、法体系や規制などの枠組整備、また原子力発電所建設・機能試験・試運転・運転などのあらゆる局面で支援していく。また、IAEAは技術開発にも積極的に取り組んでいる。高速炉技術には非常に将来性があり、日本はこの分野でのリーダーである。もんじゅ再開にも期待したい。 原子力の導入を計画する国において、最高レベルの安全とセキュリティの確保は大変重要。IAEAは、規範設定、ピア・レビュー、投資アドバイス、知識の共有、人材育成などを通して加盟国の安全確保に努めている。核テロ防護に関しては、昨年の北京オリンピックに続き、今夏に南アで開かれるワールドカップでも、IAEAがテロ攻撃防護で協力する予定。また、ハイチとチリの地震後にも放射性物質が流出していないか確認を行った。 IAEAでは、健康、食品、水資源管理など、基本的なニーズに応えることのできる原子力の応用技術にも尽力している。事務局長としての初年度であるこの1年は、途上国におけるがん対策に力を入れていく。放射線医療機器を利用できる先進国に比べ、途上国のがんによる死亡者は3倍に達している。IAEAは1980年以来すでに約2億2000万ドル以上の機器や訓練といったがん関連支援を途上国に提供している。9月にはウィーンでがん治療のための会議を開催するので、日本の積極的な参加を求めたい。 核不拡散については、メディアが最も多く取り上げるIAEAの活動分野である。全ての国が包括的保障措置の追加議定書をIAEAと結ぶことで、申告核物質の転用を防ぎ、未申告の核物質・核活動がないことに対し、IAEAは信頼を持って保証できる。残念ながら北朝鮮の状況は国際社会にとって深刻だ。朝鮮半島の非核化は大きなテーマとなっている。 IAEAは今後も核不拡散と平和利用のバランスをとりながら原子力の発展に貢献していく。 |
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