【第43回原産年次大会】 セッション2 C.S.カン韓国原子力産業会議副会長、「原子力発電利用の世界的な拡大に向けて−韓国の試み」

原子力は実質的にCOフリーな電源であり、ウランの供給地域が政治的に安定、多様であることなどから持続可能な開発が見込める。経済協力開発機構・原子力機関の見通しでも、2050年に世界で最大1400基が稼働する可能性があるなど、将来性は有望だ。

韓国では1987年、最初の1基を3億2000万ドルの予算、ターンキー契約で導入したのを皮切りに、80年代には国産化を開始。90年代は出力100万kWのOPR1000の開発を完了した。2000年代になると140万kWのAPR1400を新古里3、4号機として建設中のほか、新蔚珍1、2号機の建設も計画中だ。OPRは設計寿命が40年、耐震設計基準は0.2Gで緊急炉心冷却が2系統、制御方式の一部にアナログを採用しているのに対し、APRではそれぞれ、60年、0.3G、4系統、デジタル方式に改良している。

現在稼働中の20基、1770万kWは総電力需要量の34%を供給。運転実績は過去10年間の設備利用率が常に90%代をマークするなど非常に良好だ。電源別の価格競争力も優れており、kWhあたりの販売価格で原子力は3.2セントと最も安価。最近では、李政権が新たな国家構想として確立した長期国家エネルギー計画の中で、原子力のシェアは08年の36%から30年に59%に拡大させる方針だ。

次に紹介するのは「グリーン・エナートピア」の概念。エネルギー、経済、環境を調和させたエネルギー・ユートピアによって、持続可能な開発を実現しようという考えだ。韓国の計画では、原子力が重要な役割を果たす。まず、超高温ガス炉(VHTR)とAPR1400で水素と電気を大量生産し、水素は極低温液化してパイプライン輸送、電力は超伝導体で送電する。これらを水素自動車や冷暖房、電気自動車などに活用すれば、化石燃料への依存を減らすことが可能。

この課題への取り組みを私見として説明すると、原子力の発電シェアを早急に8割まで上げ、モジュール工法により経済性を大幅に向上させる。次に出力33万kWのSMART(中小型一体型原子炉)で多目的利用を進め、VHTRと硫黄−ヨウ素(SI)プロセスで水素の大規模製造を実現。ナトリウム冷却型高速炉とパイロプロセシングを組み合わせた循環型・燃料サイクルでグリーン・エナートピアを完成させたい。

具体的には、20年までに高速炉実証炉の標準設計を終え、パイロプロセスの技術的、経済的な実現可能性を見極める。水素製造システムは16年までに技術実証のための基盤を整えるべきだ。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで