米オバマ大統領 米露協定、議会に再提出 イラン制裁等で共同歩調

米国のB.オバマ大統領は11日、2008年9月以降、批准棚上げとなっていた米露原子力平和利用協力協定を議会に再提出した。

ウラン濃縮事業の推進で核開発が疑われるイランに対し、国連安保理で新たな制裁決議採択に向けた共同歩調を強めると共に、米国原子力産業の技術や機器の輸出に道を拓くのが主な目的。ロシア側にとっても、原子力分野における両国のリーダーシップを強化、米国の原子炉への核燃料供給事業でさらなる利益が期待できるなど、米露双方に有益な協定だ。また、同協定の批准・発効は、昨年5月に調印されたまま手続きが進まない日露協定の発効にも影響があることから、今後の動向が注目されている。

米国はW.ブッシュ大統領時代の08年5月にモスクワで同協定に調印し、議会に提出した。しかし、議会で90日間の継続審議が完了する前の同年9月、南オセチア紛争の勃発にともないロシア軍がグルジアに侵攻。同大統領は協定の承認決定を翻し、議会審議からも撤回していた。

ロシア側では、今月ニューヨークで核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催されているのを機に、訪米中のS.リャブコフ外務次官が、オバマ現政権が同協定を米国議会に再提出するよう希望するとの意向を表明。前政権による審議撤回は政治的な事由によるものであり、その内容とは無関係だったと強調していた。

オバマ大統領も議会へのメッセージの中で、@グルジアでの状況は原子力協定批准に向けた手続上、もはや障害ではなくなったAイラン問題での米露協調は、そのレベルと範囲に鑑みて同協定の再提出を正当化するに足る−−と説明。H.クリントン国務長官やDOEのS.チュー長官、米原子力規制委員会の委員達からも再提出を促されたことを明らかにした。

同大統領はまた、再提出を決めた具体的な理由として、過去1年間に両国が核不拡散および原子力の民生利用分野で協力の度合いを実質的に深めてきた事実を列挙。今年4月に新たな核軍縮条約(新START)に調印するとともに、両国の核兵器解体から出たプルトニウムを効果的に処分するため、2000年に締結した協定の改訂議定書に調印した点を強調している。

両国の原子力協力協定(=有効期限30年間)が発効すれば、米国から原子炉を含めた機器、資機材および技術の対露輸出が可能になる。ただし、機微な技術やその関連施設、重要機器に関する制限データについてはその限りではない。


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