産構審・部会が産業ビジョン 原子力システム輸出を 法制度の整備支援も

経済産業省の産業構造審議会産業競争力部会(部会長=伊藤元重・東京大学経済学研究科教授)は1日、日本産業の今後のあり方を示す報告書「産業構造ビジョン」をとりまとめた。政府が今月にもとりまとめる「新成長戦略」を見据え、2月より計6回にわたり、産業界の重鎮ら参画のもと議論してきたもの(=写真)。

今回、まとめられた最終版では、前回会合での骨子案に対し、意見公募なども踏まえ、「世界の主要プレーヤーと市場の変化に遅れた日本産業の『行き詰まり』を直視」、「戦後成長の『成長の神話』からの脱却」といった視点から、「産業構造の転換」、「企業のビジネスモデル転換の支援」、「『グローバル化』と『国内雇用』の二者択一からの脱却」、「政府の役割の転換」からなる政府・民間を通じた「4つの転換」を冒頭に掲げ、「国を挙げて産業競争力強化に乗り出す」姿勢を打ち出した。

その上で、今後の産業構造転換の方向性として、まず、「インフラ関連/システム輸出」、「環境・エネルギー課題解決産業」、「文化産業」、「医療・介護・健康・子育てサービス」、「先端分野」を成長を牽引する戦略5分野に掲げたほか、これらを支える主要産業として、製造業、エレクトロニクス・IT産業、エネルギー産業について、今後の方向性とアクションプランを述べている。また、各分野・業種間の横串的な議論を踏まえ、日本のアジア拠点化、人材力強化など、9項目の横断的施策を示した。

戦略5分野に掲げる「インフラ関連/システム輸出」のうち、原子力発電については、世界市場を@比較的投資リスクが小さく市場規模の大きな欧米市場A今後急速な成長が見込まれる中国・インド市場B東南アジア・中近東等の新規導入国――に大別、新興国市場では、燃料供給、設計・調達・建設、運転・管理、人材育成、法制度の整備支援までも含めたシステム・サービス全体の受注が見込まれるとしている。具体的施策として、新興国市場では、協定締結を促進するとともに、「システム輸出」が可能な体制構築を目標に、官民一体となって当該国に一元的な提案を行う電力を中心とした「新会社」を今秋までに設立し、官民のリスク分担のあり方について検討を進めるほか、燃料供給能力、人材育成、技術開発の強化を図っていく。

また、横断的施策では、「付加価値獲得に資する国際戦略」として、京都議定書下のCDMで、原子力発電やCCS(CO回収・貯留)が対象外となっていることから、これらが国内目標に反映されるCO削減の新メカニズムの仕組み構築にも言及している。


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