班目安全委員長 法制度改革の必要性強調 「まず自由な議論から」

4月に原子力安全委員長に就任した班目春樹・前東京大学教授は、5月27日の原子力総合シンポジウムで、「原子力安全の一層の強化に向けて」と題して講演し、個人的な考えと断りながらも、今後の原子力安全規制について、「制度改革の必要性」を強調した。

同氏は、原子力安全を守る3要素は、人材と技術、それに制度を挙げ、「日本に欠けている問題は、制度が欠けている点だ」と強調。一次審査を行う原子力安全・保安院の関係委員会に大きく関与してきた経験から、「事業者が自らをどう律しているかの制度の充実に力を注いできた」と振り返った。

規制当局による立ち会い検査などの官製検査から、事業者内の管理体制、教育体制などを問うようにしてきたし、規格基準も学協会に整備してもらい、後に国が承認するようなやり方に変えてきた、と説明した。

ただ、「いまだに大きく抜け落ちてしまったのが法制度全体の問題だ」と指摘し、日本は原子炉等規制法(基本設計、保安規定など)と電気事業法(詳細設計、使用前検査、定期検査など)の間を、「いったりきたりする」と述べ、「制度ありきで議論すべきではない。法は絶対で技術者が何かを言ってはいけない、誰かに任せるもの、というのはいけない」と語った。

安全規制のあり方については、「国民との対話・リスク・コミュニケーションから、さらに踏み出して、安全規制のための制度がいかにあるべきか検討する時期にきている」と訴え、「安全委員会としても設置法第1項に規定されている『安全の確保のための規制に関する政策』に取り組み、義務を果したい」と積極的姿勢を示した。

同氏は「外国からはよく、規制はシンプルな方がベターだ。日本の規制は複雑で分かりにくい」と指摘されると紹介し、「柔軟なプロセスの方が安全」で、民主党による国家行政組織法上の3条委員会(現在の8条規定の諮問委員会ではない行政委員会)構想も出てきている中、「まずは関係者自らが自由で忌憚のない議論をすることから始めるべきだ」と訴えた。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで