カナダの使用済み燃料処分 最終処分場のサイト選定手続き開始

カナダにおける高レベル放射性廃棄物(HLW)処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は5月31日、使用済み燃料の深地層処分場のサイト選定手続きを開始すると発表した。2007年6月に「適応性のある段階的管理(APM)」を使用済み燃料を長期管理する連邦政府の最終方針として決定して以来、NWMOは約2年間にわたって、これに関する国民および関係団体らの意見を聴取。それらを元に、処分場受入れ意思のある地方自治体を適切かつ公正に選定するプロセスが完成したことから、いよいよAPMの具体的な活動を実施するとしている。

カナダの放射性廃棄物管理方針では、使用済み燃料は再処理せず、将来回収する可能性を維持しつつ常に監視付きで直接処分することになっている。まず、発電所サイトで使用済み燃料を保管しながら候補地のFSと特性調査を実施。浅地中・集中中間貯蔵施設建設の必要性を検討し、建設しない場合はサイト内での貯蔵を継続する。中間貯蔵を開始してからは、地下研究所で深地層処分場サイトの適性を確認、建設・操業するという手順だ。受入れに関心を持つ自治体は、最終的な合意文書に署名するまでは手続き上のいかなる段階でもプロジェクトとの関与を打ち切る権利がある。

今回、カナダ市政機関連合の年次博覧会でNWMOが公表した2014年までの行動計画によると、処分場は敷地面積100ヘクタールの地上施設と、地下500メートルの岩盤内に作る深地層施設で構成される。処分場用の母岩には約2.5km×1.5kmの広さが必要だ。使用済み燃料の束は腐食防止措置の施された銅製コンテナに充填し、シャフトで地下の定置室まで降ろす。それらを岩盤中の掘削孔に納めた後、隙間をベントナイトで密封することになっている。

プロジェクト全体の経費は160億〜240億ドル(1兆4000億〜2兆1000億円)と見積もっており、最初の「サイト評価段階(10年以上要する見込み)」では、候補地での試掘孔の掘削を含む詳細調査や安全性分析、および社会経済性調査などを行う。この段階で年間数千万ドルの経費が必要。

次の「規制承認段階(5年以上)」で、NWMOは選定した候補地の環境評価を完了させなくてはならない。徹底した安全性評価活動のための認可を得るとともに、サイト準備と建設のための認可を取得する。

地下の研究所と地層処分場を建設するには10年以上かかると見ており、認可が降り次第、NWMOは研究所の建設を開始する。この段階の経費は5年間に毎年1億ドルと見込んでいる。

続いて地下500の処分場と、輸送されてきた使用済み燃料を保管する地上施設の建設を開始するが、経費は5年間に毎年数億ドルかかる見通し。処分場の操業は30年以上を想定しており、この段階での経費は年間2億ドル程度だとしている。


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