ロシアでアトムエクスポが開催 新型炉で進む技術革新

【モスクワ8日・喜多智彦特派員】モスクワ中心部、クレムリン近くのマネージ中央展示会館で、ロシア最大の原子力展示会・原子力会議「アトムエクスポ2010」が7日、開幕した。「原子力発電――革新的発展の原動力」をテーマとする今年の同会議はロスアトムが主催、エネルギー省、WANO、ドゥーマ(議会下院)などが後援。8日にはキリエンコ・ロスアトム総裁も参加したプレナリー・セッションが開かれた。

同セッションでは、最初にS.ソビャニン・ロスアトム会長(副首相兼内閣府官房長官)が挨拶。ロシアが原子力発電において競争力と革新性を向上させるため、2020年までに40億ドルを投資する予定であり、海外に対しては「特別のパッケージ」を用意。トルコとは建設・所有・運転(BOO)契約を結んだほか、アンガルスクでは燃料供給保証を目的とした国際濃縮センターの設立を進めるなど、ロシアの原子力界が国際的な活動を進めていることを紹介した。

ロスアトムのキリエンコ総裁は、「『原子力ルネサンス』は、世界的な金融危機の影響を受けずに耐えた」と昨年以来の状況を総括。世界の原子力発電開発計画の大部分は新規導入国にあり、原子力技術供給国はこれらの需要に十分こたえられるよう、「十分にフレキシブルな対応が必要」だと述べた。

同総裁はまた、トルコ、アルメニア、イラン、インド、チェコ、ウクライナなどの最近の活動を紹介しながら、各国の国産化やジョイントベンチャーなどの要求に応えるなど、導入国のニーズに応えた「フレキシブル」な協力を行っていると強調した。

プレナリー・セッションで、日本・東アジアから唯一の講演者となった原産協会の服部拓也理事長は、「原子力エネルギーでのイノベーションと社会への貢献」と題して講演。日本の科学技術政策を紹介したあと、原子力におけるイノベーションの概念として、@持続可能な発展の実現A経済発展、エネルギー・セキュリティ、環境保護(3E)の同時達成B低炭素社会の実現――の3点を指摘。このためには、政府政策による全面支援、産学協力、人材育成、国際協力、3Sの遵守などが必要だとした。

服部理事長はこのあと、次世代軽水炉開発、小型炉としての東芝の4S炉、高温ガス炉、高速炉サイクル開発など、日本の進めている革新的な原子力技術の開発についても概説した。

プレナリー・セッションに先立つ7日には、「原子力における人材−−問題と解決策」「改良型および革新型の加圧水型軽水炉」「新世代型炉と統一型の自動プロセス制御システム(APCS)」などの分科会に分かれて発表・討論が行われた。

「改良型および革新型の加圧水型軽水炉」の分科会では、ロシアの進めているAES2910(VVER−TOI)などの改良型PWR開発を紹介。@ウラン利用効率の向上A投資リスクの低減B熱力学的効率の向上――の3点を開発目標にしていると説明した。また、圧力が低くシンプルな構造から、これまでロシアが手掛けてこなかったBWRが、自然対流冷却炉、超臨界圧炉や軽水増殖炉などとの組み合わせで、注目を集めている様子がうかがえた。


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