【国家成長戦略 「原子力」を見据える】 文部科学大臣政務官 後藤 斎氏に聞く 実用化見据えた「もんじゅ」再開 国民が「大丈夫だ」と思えるよう

―原子力委員会が5月末に取りまとめた「成長に向けての原子力戦略」では、「グリーン・イノベーション」に対する原子力科学技術の役割としてまず、エネルギーの安定供給が掲げられており、さらに長期的には、高速増殖炉サイクルの実用化にも期待がかけられているところ。このほど約14年ぶりに運転を再開した「もんじゅ」について、ナトリウム漏えい事故の教訓と、これを踏まえた今後の安全・信頼確保に向けて、特に留意すべき点は。

後藤政務官 慎重にも慎重を重ね、運転再開に至ったわけだから、やはり、「安全性確保」と「情報公開」の2つをキーワードに努めていかねばならないと思う。

―「もんじゅ」の所期目的「発電プラントとしての信頼性の実証」の意義は。

後藤政務官 これからの国内外エネルギー需給を考えた場合、新たな「エネルギー基本計画」策定の議論でも、2030年までに原子力発電量を倍増し、あわせてCOを削減していくこととしている。そのような中、化石燃料の価格高騰などの要因もあるが、原子力発電に移行しようという国も幾つか出てくるところで、その一方、ウランもいずれは100年程度で枯渇していくという推定もある。

そこで、「もんじゅ」を機軸とした高速増殖炉開発に、2つの要素を評価する。1つは、ウランを、30〜40倍有効利用できること、これは、あわせてリサイクルともいえる。もう1つは、熱効率が1.25倍になるということ、この2つが現在の軽水炉と比べて特徴的なことといえる。また、1970年代から本格導入されてきた軽水炉も、いずれ耐用年数に達し、リプレースが必要となるが、その集中する時期が2040〜50年頃と聞いているので、やはり、そこへ向けた実用化を目指し、発電プラントとしてキチッと位置付けていくべきと思う。

―フランス、インド、中国など、他国の追い上げに対し、日本の高速増殖炉技術が国際競争力を確保していく上で、「もんじゅ」再開はどのようなステップといえるか。

後藤政務官 原子力技術で、日本は確かに、欧米に比べて遅れてきたというところもあるが、やはり、安全性、特に、地震大国としての耐震技術ベースをキチッと確立した上で、現状の軽水炉もできているということを考えた場合に、当然、引き継ぐ技術もあるだろう。また、新たに開発していく革新的技術でも、そういった点に付加しながら対応していくことが、「もんじゅ」、高速増殖炉の開発にも役立っていくと思う。ただ、国民的合意形成を図っていくことが、高速増殖炉がベースエネルギーとなる上で、大きなキーとなるのではないか。

―将来の高速増殖炉実用化への展望として、2025年頃の実証炉実現の可能性と、それに向けた革新技術開発はどのように進めていくべきか。

後藤政務官 一言で答えるのは非常に難しいところだが、少なくとも、軽水炉で現状の確立された技術があり、これに対し、高速増殖炉へ向けての新しい技術をどのように付加していくかは、正に来年以降検討が始まる概念設計・基本設計をどうしていくかに尽きると思う。

実証炉を作る場合、事業者の長年の蓄積で、安全性もそうだが、当然、プラスの面がなければならない。その1つの大きな要素が経済性で、先ほども述べたウランの将来的需給や熱効率向上も長い目でみれば経済性だろうし、設備投資に幾らかかるかということも必要だろうし、それらを含め合わせて「革新的技術」というべきだと思う。

いずれにせよ、地元からみた「もんじゅ」への信頼については、14年間、停止していたわけだから、立ち上がって、健全な筋肉なり、精神を取り戻していくにはやはり、まだ時間がかかるだろう。再スタートした後も、大きなトラブルではないにせよ、色々と不具合も生じているから、これらを今後の試運転の中で解消し、何か不具合があれば情報開示をするという、キャッチボールの中で、地元、国民が「これは大丈夫だな」と思えるよう、この先数年間で取り組んでいくことではないか。

(石川公一記者)

(本シリーズは今回で終了します)


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