【原子力ワンポイント】 原子力発電の役割と今後の展開(2) 既設炉の有効活用は設備利用率向上から

―原子力発電が温暖化防止に役立つことは分かったけれど、ちゃんと動いていない発電所があると、設備はあっても地球温暖化防止には貢献できないよね。

日本は1990年代半ばには、設備利用率が80%を超え世界でもトップクラスだったんだけれど、近年は6割ちょっとと低迷してしまって世界ランクも最低に近い。一方で、米国や韓国などではさらに向上していて9割を超えているんだ。もし設備利用率が日本全体で1%上昇すると、CO排出量を年間300万トンも削減できると言われている。

―どうして、日本では設備利用率が低迷してしまったの?

1つには、2000年以降、不祥事や地震などで停止期間が長くなってしまっているためだ。海外に比べ2倍以上も長く停止している。

もう1つは、海外では運転期間(定期点検の間隔)を18か月や24か月に延長している国もあるけど、日本ではまだ13か月以内で運用されている。実は最近、制度が見直されて、発電所の点検評価等の実績に応じて、13か月を越える運転期間を設定することが可能になった。これからは、段階的に18か月を目指し、その達成後にはさらなる長期の運転期間を実現するよう取り組むとされているよ。

―具体的に、どうやったら設備利用率を上げることができるのかな?

最大の問題は、停止期間が長すぎること。トラブルなどで停止期間が増えては困るので安全最優先はもちろんだけど、実は海外との大きな違いがもう1つあって、停止中の点検物量が、日本では海外の2倍以上も多いんだ。海外で設備利用率が向上したのは、点検実績の評価・見直しを合理的に行って、点検物量を大きく減らすことができたから。それに対して日本では、しっかり点検をしているといえば聞こえはいいけれども、分解・点検・組立を過剰に行っても品質は上がらないし(むしろ逆効果)、熟練技能者などの労働力の確保がたいへんということもあるんだ。もし停止期間中に行っている点検を海外のように運転中に行うことができれば、停止期間は短縮できるし、労働力は年間で平準化され、品質の向上が期待できるというメリットもある。

設備利用率と安全は二者択一でも二律背反でもなく、点検を科学的・合理的に実施することによって、運転期間の延長、停止期間の短縮、安全性の向上の全てを同時に達成できるんだよ。

2020年までには設備利用率85%、2030年までには90%という目標も掲げられているよ。さらに世界トップレベルを目指すためには、海外同様、停止期間を短縮し、運転期間を延長する努力が大事だね。

今ある発電所を有効活用できる仕組みとして、設備利用率向上の他に、「出力向上」という方法もあるんだ。今後、重要となってくる「出力向上」について、次回、紹介したいね。


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