供給側、研究機関、医学会が モリブデン供給で議論

原産協会の量子放射線利用普及連絡協議会(座長=勝村庸介・東京大学院原子力専攻教授)が6月15日に開かれ、三大成人病であるがん・虚血性心疾患・脳血管疾患の検査に使われるテクネチウム99m検査薬の原料であるモリブデン99の安定供給や国産化問題について、日本アイソトープ協会、原子力機構、横浜市立大学の専門家による講演と関係者との質疑応答によって、現状と問題の本質が明らかになった。

モリブデン99(半減期約66時間)から製造するテクネチウム99m(半減期約6時間)薬剤の世界中での使用は、米国が第1位、日本は第2位で年間90万人の患者が検査を受けている。

世界の主なモリブデン99の製造炉は、カナダのNRU、オランダのHFR、ベルギーのBR―2、南アフリカのSAFARI、フランスのOSIRISの5基で、世界の99%を供給。いずれも運転開始から42年〜52年を経過し、かなり老朽化が進んでいる。最近も加NRUと蘭HFRの故障のため、今年2月から8月には世界需要の約64%が供給されない状態が続いている。

日本は100%輸入に頼っており、2009年に加NRUが止まって、モリブデン99の輸入量は通常の40%程度にまで減ったものの、製薬会社から病院への供給方法を工夫することによって、08年の供給量とほぼ同程度の供給が可能だった状況が報告された。

日本も原子力機構の現在改造中の材料試験炉(JMTR)を使ったモリブデン99の国産化に向けた検討が関係者間で進められているが、研究や成果の民間利用には国の予算は使用せず民間負担との方針により、モリブデン99製造の件は、利用者の資金負担が明確になっていないことから、照射装置などの整備は進んでいないのが現状だ。関係者は、国内需要の20%程度の国産化を行いたいとしている。

95年2月の「特殊法人の整理合理化」に関する閣議決定で、それまで原子力機構が行ってきた放射性同位元素(RI)の製造・頒布事業も合理化を求められ、海外から輸入可能なRIは製造・頒布を中止することになっていることから、モリブデン99を国産化する場合には、同決定についての見直しが必要となる可能性がある。

さらに今回、モリブデン99を直接必要とする医学界の日本核医学会(玉木長良理事長)、日本医学放射線学会(大友邦理事長)が連名で、今年3月に川端達夫・文部科学相と長妻昭・厚生労働相に、「テクネチウム放射性医薬品の供給体制に係る要望」を提出し、国内供給体制の確立を要請していたことが紹介された。


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