主な政党の原子力・エネルギー全般・温暖化対策などの比較

第22回参議院議員通常選挙が6月24日公示された。投開票は7月11日。原産新聞では、5党の政権政策の中から3つの分野について比較した。

□民主党の政権政策 Manifesto
【原子力】政府のリーダーシップの下で官民一体となって、原発などを国際的に展開。国際協力銀行、貿易保険、ODAなどの戦略的な活用やファンド創設などを検討。がん粒子線治療の支援を含めた放射線療法及び化学療法を推進。
【エネルギー全般】再生可能エネルギーの普及拡大に向けた発電施設などに係る規制の見直しなどの規制改革を進める。再生可能エネルギーを全量買い取る固定価格買取制度の導入と効率的な電力網(スマート・グリッド)の技術開発・普及、エコカー・エコ家電・エコ住宅などの普及を支援。
【地球温暖化対策】2011年度導入に向けて検討している地球温暖化対策税を活用した企業の省エネ対策などを支援。公平・実効性ある国際枠組などを前提に、温室効果ガス削減の中期目標(90年比25%減)を世界に向けて発表した。

□自民党政策集J‐ファイル2011 (マニフェスト)
【原子力】地球温暖化問題の解決に原子力発電所の活用は不可欠であり、増設も含めて体制を整備。「原子力発電施設等立地地域振興特別措置法」の延長など施策の充実を図る。安全審査体制のあり方を再検討し、プルサーマル計画を更に推進、国民の理解を得る努力を続ける。原子力発電等の国際展開を強力に支援し、官民協働で技術・ノウハウ・製品が統合されるパッケージとして受注競争での“競り負け”を防ぐ。
【エネルギー全般】エネルギー自給率を2030年には30〜40%を目指すと同時に再生可能エネルギーを含めたゼロ・エミッション電源の比率を現在の34%から2020年で50%、2030年以降は70%程度まで高める。再生可能エネルギーの固定価格買取制度導入などで太陽光発電を現状の20倍規模に拡大。電力系統の高度化、電気事業者による再生可能エネルギーの利用の促進。バイオマスエネルギーの拡大。様々なタイプの風力発電や小水力発電の開発・普及を図る。
【地球温暖化対策】日本発の新たな温暖化ガス削減の世界的な枠組み作りを提唱。共通炭素税や国際連帯税などから地球救済基金(仮称)を設置。温暖化ガス排出量を2020年までに05年比で15%削減(国内排出量削減分)を掲げ、低炭素社会を実現。環境税については、納税者の理解と協力を得つつ、総合的に検討。

□公明党マニフェスト2010
【原子力】原子力発電の安全性を確保しつつ稼働率を上げるなど適正に推進。原子力発電所の安全審査、耐震バックチェックの厳格運用、事業者の体質改善など、地域住民の理解と安全を確保。政府が先頭に立って、原子力発電等システムとしてのインフラ輸出を促進。世界でトップレベルにあるわが国の原子力安全技術を展開することを通じて、原子力の平和利用や安全ネットワークの構築にリーダーシップを発揮。がん対策推進基本計画の5年後の見直し(2012年度)を前に、放射線療法・化学療法の普及と専門医の育成等個別目標を実現。
【エネルギー全般】2020年までに2005年比で30%以上の省エネルギー(エネルギー効率の30%以上アップ)を達成。2030年に電力の30%を自然エネルギーでまかなう国をめざす。再生可能エネルギーを2020年までに1次エネルギー供給量の15%へ引き上げる。国民生活等に与える影響に配慮しつつ再生可能エネルギー電力の全量固定価格買取制度を創設。太陽光発電導入量を2020年までに30倍以上に引き上げ。潮流発電など、海洋エネルギーの利用を推進。都市全体の太陽光発電と電気自動車をスマート・グリッド(次世代電力網)で結び、地球に優しい自然エネルギー都市を構築。省エネルギーで実現する経費節減分で省エネ投資を賄えるESCO事業の活用など、中小・小規模企業の省エネに対する支援を強化。エネルギー自給率目標の設定など新たな中長期の目標を含めたエネルギー戦略を構築。エネルギー特会などにはメスを入れ、独立行政法人等のムダをなくす。
【地球温暖化対策】世界の平均気温上昇を2℃以内に抑制するとの目標を明記し、日本の温室効果ガス排出量を1990年比で2020年に25%以上、2050年に80%以上削減。京都議定書約束期間(2008〜2012年)の目標(温室効果ガス1990年比6%削減)を確実に達成。2012年までのキャップ&トレード型の国内排出量取引制度創設などの政策を盛り込んだ「気候変動対策推進基本法」の制定をめざす。税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直し)を推進し、地球温暖化対策税の導入を検討。わが国のCO2排出の約3割を占める電気事業において、CO2排出の多い老朽化施設をCO2排出の少ない最先端施設に切り替えることを促進。途上国の地球温暖化対策の資金とするため、国際社会が連携した「地球環境税」(仮称)の創設を検討。

□共産党参議院選選挙公約
【原子力】原発からは、計画的に撤退すべき。プルサーマル計画や「もんじゅ」の運転再開計画は撤回し、六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検を実施し、計画は中止すべき。原発の総点検を行い、安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとる。国民の安全に責任を持つ規制行政を確立するうえで、原発を規制・監督する原子力安全・保安院を、促進官庁である経済産業省から独立させる。国内外で、技術的に未確立で、事故や廃棄物による放射能汚染という環境破壊の危険も大きい原発の新増設をすすめることはやめるべき。
【エネルギー全般】2020年までにエネルギー(1次)の20%、2030年までに30%を再生可能エネルギーでまかなう「再生可能エネルギー開発・利用計画」を策定し、着実に実行する。電力会社が、太陽光だけでなく自然エネルギーによる電力全般を、10年程度で初期投資の費用を回収できる価格で、全量買い入れる「固定価格義務的買取制度」に転換し、初期投資を回収したあとは余剰電力の買い取りに切り替える。バイオ燃料の具体化にあたっては、新たな環境破壊を引き起こさないためのガイドラインを設ける。エネルギー高騰を許さないため、投機規制に取り組む。
【地球温暖化対策】先進国としての国際的義務を果たすために、2020年までに90年比で30%削減することを明確にした中期目標を確立し、温暖化対策基本法案にも盛り込まれた2050年までに80%削減するという長期目標にむかい着実に実現していくための手立てを講じる。日本が開発した再生可能エネルギーの利用や省エネの技術、ノウ・ハウを生かして、途上国の排出抑制を支援。

□社民党マニフェスト総合版
【原子力】脱原発をめざし、核拡散につながるプルトニウム利用政策を転換し、国際的にも批判が強い六ヶ所村の核燃料再処理施設の運用を凍結。原子力発電からは段階的に撤退。運転中にCO2を出さない点だけを強調して、膨大なコストや放射能廃棄物のリスクを軽視し、国民の理解や支持も不十分なまま、温暖化対策として推進するのは危険。特に耐震性に問題のある原子炉は速やかに廃炉にする。NPTの厳格運用を図り、NPT非加盟国への原子力協力は一切行わない。
【エネルギー全般】自然エネルギーの導入目標は、「1次エネルギー供給量に占める割合を20年に20%」とし、導入目量の低い「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置(RPS)法」は廃止して「自然エネルギー促進法」を制定。「再生可能エネルギーに係る全量固定価格買取制度の創設等」は、すべての自然エネルギーを可能な限り対象とし、発電全量を買い取る。初期費用の回収が可能となる買取期間や価格の設定、制度の導入時期、電気事業者の買取義務、国民負担のあり方、地域間格差の平等化などを明確化し、速やかに制度を創設する。スマートグリッドの開発・普及で電力インフラを造りかえ、地産地消型のエネルギーの安定供給体制をつくる。石油や原発に偏ったエネルギー対策特会(総額8900億円)、電源開発促進勘定(3700億円)を自然エネルギーの促進に活用。
【地球温暖化対策】温室効果ガスを2020年までに90年比30%、2050年までに80%削減を実行するための地球温暖化対策基本法をつくる。国際合意に縛られずただちに取り組み、削減は真水(国内対策)で行い、世界の気温上昇を2℃未満に抑制し、低炭素社会の方向性を示す。国内排出量取引制度については、排出量の増加を容認する原単位方式ではなく、費用効率的かつ有効な総量削減となるよう、政府が総排出量の上限を決め、日本の温室効果ガス排出量の約7割をしめる大規模な事業所(発電所含む)などに排出枠を配分する「キャップ&トレード型」の国内排出量取引制度を導入。環境税・炭素税(CO2排出量に比例)の導入により、化石燃料の消費を抑制、新たな環境産業の育成を促す。


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