英国、廃棄物処分計画の概要公表 1処分場に全種類埋設英国で高レベル放射性廃棄物(HLW)処分の実施主体となっている原子力デコミッショニング機構(NDA)は6日、深地層処分計画の概要と経過についてまとめた報告書「地層処分――実施に向けた段階的手続き」を公表した。すべての放射性廃棄物は、中間貯蔵後に時期をずらして1つの深地層処分場に埋設し、2130年以降、最終的にすべての坑道と立入口を埋め戻すと仮定した概念例を提示している。しかし、まだ初期段階の暫定計画であることから、後に複数の処分場が必要になる可能性についても言及している。 英国では2006年、中間貯蔵と地層処分を組み合わせる管理方針を政府が決定し、08年に6段階の地層処分場サイト選定手続きを示した「放射性廃棄物の安全な管理に関する白書」を公表した。これに従って、サイトの選定は政府が主導権を取って進める一方、NDAは下部組織の放射性廃棄物管理局(RWMD)を通じて処分場の計画立案と開発を担当。今回の報告書は、これまでの準備作業や処分対象となる廃棄物の数量など、処分場受け入れに関心を持つ自治体等に出来るだけ多くの関連情報を提供するのが目的だとしている。このため、基礎となる「標準計画」を白書に基づいて便宜的に設定したものだが、今後の技術開発動向やサイト固有の評価など、不確定要素次第で最終的な判断が変化する可能性があると強調している。 報告書はまず、白書が07年のデータを元に設定した「廃棄物の基本リスト」を提示(表)。原子力の民生利用および軍事利用も含め、処分の必要がある廃棄物の総量を47万6900立方メートルと見積もった。再処理前の使用済み燃料や再処理後のプルトニウムとウラン、燃料製造後のウラン残渣が含まれるが、今後建設する新たな原子炉からの廃棄物についても、同じ処分場で処分可能だとしている。 候補である(1)花崗岩(2)堆積岩(3)蒸発岩――の3種類のうち、高強度な花崗岩の地層を母岩として仮定。すべての廃棄物を地下200〜1000メートルのほぼ同じレベルに併置処分するが、処分エリアは(1)低レベル廃棄物(LLW)、中レベル廃棄物(ILW)、ウラン残渣(2)HLW、使用済み燃料、プルトニウム、高濃縮ウラン――に分ける計画だ。 処分方法は人工および天然バリアによる多重バリア方式とし、廃棄物は放射能レベルに応じて、ガラス固化など適切な処分形態を選択。HLWは特に、中間貯蔵期間中や地層処分場に輸送するまでの間、安全性が維持されるよう、十分な強度と腐食耐久性を持つステンレス製キャニスターに封入する。 処分実施までのスケジュールとしては、(1)準備調査(2)地上からの調査(3)建設・地下での調査(4)処分場の操業(5)閉鎖――の5段階を明示した。 (1)2015年までの第1段階 政府によるサイト選定手続きの第1〜第4段階に相当し、処分場受け入れに関心を持つ候補地は手続きに参加できる。NDAは処分場の概念設計を進めるとともに、安全性や環境面での評価を実施する。 (2)25年までの10年間 サイト選定手続きでは候補地を調査・決定する第5段階に当たる。地上から地層の詳細調査を実施するために試掘孔を掘ったり、処分期間全体にわたるモニタリング計画を立案する。 (3)40年までの15年間 サイト決定後、関連許認可の取得や資機材の調達・契約に関する交渉を実施。これに続き地下での調査を開始するため、地下坑道や貯蔵室を掘削するほか、地上施設の建設を実施する。 (4)2130年までの約90年間 2040年にILWとLLWを既存の中間貯蔵施設から地層処分場に移動。使用済み燃料とHLWについては2075年から処分場への受け入れを開始する。ただし、この時期はまだ決定したわけではない。 (5)サイトの閉鎖 2130年以降の約10年間を予定しているが、詳細は地元自治体の意見を尊重して決定する。すべての坑道と貯蔵室を埋め戻し、開口部を封印。立入口も埋め戻して閉鎖することになる。 以上の計画においてNDAが負担するコストは概ね37億ポンド。廃棄物リストに含まれていない既存のプルトニウムなどを含めるとさらに20億ポンドがかかる計算である。 |
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