保安院と事業者の公開対話が実現 「新たな時代のスタート」として歓迎の声

原子力安全・保安院と原子力産業界による公開の場での初めての意見交換会「原子力安全規制ラウンドテーブル」が20日、東京・霞が関の経済産業省で開かれ、安全規制のあり方や規制課題への取組みなどについて、率直な意見交換を行った。規制当局と被規制側が対等の立場で、共に1つの規制ルールを作り上げていくコミュニケーションの重要性を確認し、「この会議が新たな時代のスタートになることを期待する」との声などが相次いだ。

原子力安全・保安部会小委などでステークホルダー間の対話の重要性が指摘されていたもの。会議の冒頭、寺坂信昭・原子力安全・保安院長が挨拶し、「自由に率直な意見交換を行ってほしい。しっかりと議論に参画して、意思疎通を図り、規制の充実を含め、この場が活用され、活かされることを期待している」と述べ、初めての対話に期待を表明した。

次いで、各関係者の挨拶が行われ、今回、保安院と共同事務局を務めた日本原子力産業協会の服部拓也理事長は「こういう場の設定をいろいろな機会にお願いしてきた。たいへん有意義な会議であり、安全規制の高度化はむろん、安全性に対する国民の理解、信頼にとっても極めて有益なものとなろう」と述べた。

武藤栄・電事連原子力開発対策委員会委員長(東京電力副社長)は「公開の場でのコミュニケーションはたいへん意義深い。信頼性向上に向けて、一義的に安全に責任を有する事業者として、保安活動を一層充実して信頼を高めていきたい」と述べたほか、「世界で規制を含めて日本の原子力が注目されている中、実効性、信頼される規制が重要だ」と指摘した。

メーカーからは、丸彰・電工会原子力政策委員会副委員長(日立製作所執行役常務)が、「国内中心から、それに限らず国際展開へと、グローバルに貢献していきたい。日本の技術力と規制とのバランスが取れ、相手国から見て魅力的と受け止められる状況の達成が重要と考える」と述べた。

各務正博・電力中央研究所理事長は、「原子力への期待が高まっていると同時に、多くの課題を解決していくことが求められている」と述べ、フランクな議論の場の実現を歓迎した。

意見交換の中で、藤江孝夫・日本原子力技術協会理事長は、かつて米国原子力規制委員会のメザーブ委員長(当時)が安全最優先を前提に、(1)規制活動の効率化(2)規制活動の不必要な負担の軽減(3)国民の信頼獲得――を活動の目標に掲げ、規制改革に取り組んだことを紹介した。

平岡英治・同院次長は、規制当局と産業界の役割、立場の違いをわきまえることが重要としつつ、「我々はあくまで規制の立場。事業者が行う保安活動をちゃんと確認することがベストの役割」と述べ、保安活動総合評価を引き合いに、「事業者になり代って安全であると言ってほしいという声もあるが、それはそうではないのではないか」と述べた。

これに対し、武藤原対委員長からは、「保安活動総合評価は試行を通じていいものにしていきたい。現場を良くしていくため、現場の感覚に合うことが大切」と応じた。寺坂院長は最後に、保安院ができて10年、発足時に科学的・合理的判断を1つの基準として挙げたが、「規制当局のあり方、立場、責任について考えるとき、科学的・合理的なものを超えるものが行政機関には必要と考える。それが何かは難しいが、ある人は、それを安心とかPAと言ったり、社会的合理性と言う人もいる」と述べ、今後も規制当局の課題について、関係者間で議論していってほしい、とまとめた。

服部理事長は、「初めての試みであり、この場を育てていきたいという思いは共有されたと思う」とし、次回は年内にも開催したい、と結んだ。


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