カナダ政府、医療用RI供給で 原子炉以外の生産方法模索

医療用放射性同位体(RI)の供給オプションとして原子炉を使わない生産方法を模索するカナダ政府は26日、補助金の交付候補とするために募集していた同コンセプトに基づく研究開発プロジェクトの提案受け付けを締め切った。

連邦政府の天然資源省がNISPと呼称するこのプログラムは、医療用RI生産に関する専門家審査パネルが提出した報告書に基づいて今年3月に構想が形作られた。

カナダには、世界に5基というRI生産炉の1つとしてNRU炉がカナダ原子力公社(AECL)のチョークリバー研究所内に存在。テクネチウム造影剤の原料となるモリブデンを含め世界の医療用RI需要の3分の1以上を賄っているが、昨年5月の重水漏れで同炉が停止して以来、テクネチウム製品の供給途絶を懸念する声が国内外から上がっている。

専門家審査パネルの勧告により、加政府は中・長期的な解決のために投資を行いつつ、RIの短期的な供給問題に取り組むこととし、安定供給の基礎を築ける多様化イニシアチブとして6月2日から原子炉を使わない生産技術の研究開発プログラム案募集を開始。具体的には線型加速器とサイクロトロン技術によるテクネチウム製品生産技術を優先対象とし、その研究開発・実証のための補助金として、2010年度予算から3500万加ドルを2012年3月末までの2年間に交付するとしている。

これら技術の商業規模への移行に取り組む必要性から、優先順位の高い研究分野として以下を列挙した。すなわち、(1)イオン標的と変換器の設計・合理化(2)冷却容量(3)標的の調整(前処理)と可能な生産量(4)同位体ジェネレータの設計と合理化(5)Mo100のコストと利用可能性、およびリサイクル(6)工程全体の合理化(7)規制上の要求事項に応える取り組み――など。

個別のプロジェクト規模は100万〜1300万加ドルとし、応募資格は営利/非営利を問わず合法的あるいはカナダで登録された法人組織であることで、一般企業や産業協会、大学その他の研究機関、州や地方の自治体などが対象。連邦政府の研究機関は申請者が補助金を受けられるよう支援することは可能だが、プロジェクトそのものの指揮を執ることはできない。


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