原子力委 大綱 有識者ヒアを開始 「大筋で変更不要」多数 廃棄物処分強化を

原子力委員会は、原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識者ヒアリングを7月29日から開始した。各分野の専門家が意見陳述し、同大綱の大筋は変更する必要はないとする意見が多く出されたが、高レベル放射性廃棄物の処分への対応や原子力研究開発のあり方などについては、見直しする必要性が指摘された。

第1回の29日は、井川陽次郎・読売新聞論説委員、伴英幸・原子力資料情報室共同代表、山名元・京都大学原子炉実験所教授を迎えて開催された。

井川氏は、現行大綱策定以降、原子力を巡る情勢に本質的な変化はなく、現行の原子力政策も国民の一定の支持を得られていることから、当面は大綱見直しというよりも手直しで十分との意見を述べた。ただし、安全行政体制、日印原子力協定など、大綱の守備範囲に収まりきらない問題もあるため、現行大綱の政策評価結果を踏まえたうえで、記述、データの適否を精査し、指針としてはどうかと提案した。

伴氏は、中越沖地震や二酸化炭素の排出量25%削減公約、原発新増設の強行や六ヶ所再処理工場の操業遅延、高レベル廃棄物処分場への応募がないことなど、この5年間の軽視できない変化を踏まえ、見直しを進めるべきとした。

見直しの視点として同氏は、@地方自治体レベルの議論を尊重し、意見反映するシステムを構築するAエネルギー需要の低下や地元の強い反対を押し切った建設など、地域住民の理解や共生を無視した開発の在り方について見直すB再処理を基本方針とする政策を見直し、直接処分に関する研究を進めるC高速増殖炉開発の総合的な評価を進めるD高レベル放射性廃棄物の処分法やスケジュールを白紙に戻し、超長期貯蔵や回収可能性など多くの選択肢を含めて国民的な議論を進める――などを挙げた。また、安全規制機関を独立させるべく大綱見直しの中で議論を進めていくべきとした。

山名氏は、現行大綱は骨格部分が大きく変わる事はないが、5年間の環境条件、状況の進展は大きく、現状の認識は今後の方向性について最新状況に合わせた改訂が必要であると述べた。

その上で同氏は、大綱の再審議の課題として、@最新状況把握と政策評価結果や各行政庁での分析結果を集約した上で「最新の論点整理」が重要A現大綱の基本理念は普遍的に重要なことであり、大きく変更する必然性は少ないが、「対社会・対市民に対する原子力の在り方」などの原子力の本質面に係る他の共通理念がないか再吟味し、「放射性廃棄物の処理処分」についての記載を最新の状況に合わせるB全エネルギー政策における原子力発電の位置づけ(目標)について考え方を再整理するC核燃料サイクルについては現路線選択の妥当性の再確認作業を行い、政策大綱の再審議の一環とするかは別途検討すべきだが、使用済み燃料処置についての検討を開始すべきD放射性廃棄物処分については大綱の審議を機会に専門家の参加を経て「放射性廃棄物大綱」などとして国の基本方針を再度とりまとめる事を期待E国内の原子力研究開発の在り方についての基本政策として、本来あるべき「スパイラル型研究開発」体制の実現に向けて政策大綱の再審議として議論すべきF国際問題については最新の海外動向を分析し、改めて基本的政策の方向性を再定義する――などを挙げた。


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