フランス 原子力産業界の展望で報告書 EDF中心の入札チーム編成など勧告仏のN.サルコジ大統領は7月27日、2030年までを見据えた仏国原子力産業界の今後の在り方に関する勧告報告書を公表した。 昨年末に仏国原子力企業連合がアラブ首長国連邦(UAE)の原子炉建設計画受注を逃した反省から、同大統領の指示により仏電力(EDF)グループのF.ルスリー名誉会長がまとめたもの。UAE案件では、主力商品である欧州加圧水型炉(EPR)の初号機建設がフィンランドで大幅に遅れるなど、アレバ社の責任を追及する声が上がっていたほか、原子炉の運転・保守で実績のあるEDFの参加が遅れるなど、企業間の連携不足が受注失敗の一因として指摘されていた。 報告書は、海外の顧客ニーズに合わせた原子炉輸出が可能な専門組織、大統領に直結するエネルギー省を仏政府が創設することや、アレバ社を始めとする同国企業を世界の原子力産業界のリーダーとすべくEDFを「チーム・フランス」の牽引役に据えるなど、15項目を勧告。今後、これらを叩き台に、官民が一体となって海外の原子炉受注拡大を目指した活動を展開していくと見られている。 ルスリー報告書はまず、世界が今、原子力需要の堅調なルネッサンス期を迎え、今後20年間に新たに約250基の新規原子炉建設が見込まれると予測。この機会を仏国原子力産業界が的確に捕らえていくには、2030年までに国内と海外の両面で課題に直面するとしている。 〈海外案件は国が中心に〉 国内の課題として挙げられるのは、新規原子炉の建設や既存炉の運転寿命延長、廃止措置などの準備作業。海外関係では、国が産業界のとりまとめで引き続き中心的役割を果たす一方、産業界は顧客への提案内容で改善を図るため、「チーム・フランス」の組織的な問題や供給競争力、資金調達能力、人材などの問題を克服する必要がある。原子力輸出を確実なものとするために、企業間で提携を進めるべきだ。 〈EDFとアレバ社の戦略的な連携を強化〉 具体的には、EDFとアレバ社が共通の関心分野において戦略的な連携で合意することが重要。フロントエンドでは特に、燃料供給側のアレバ社と消費者であるEDFが戦略的に意思疎通を図る必要がある。原子炉輸出についても、中央政府の指示に基づいて動ける、独自の予算を持ったエネルギー省を創設するなど、政府による産業界取りまとめの役割を強化するとともに、EDFの計画立案・運営能力をベースに、顧客ニーズにフルに応えられる専門組織を政府が創設すべき。EDFについては特に、原子炉運転事業者およびアーキテクト・エンジニアとしての実績を重視。特別な事情が無い限り、「チーム・フランス」の事業計画立案役としてEDFが入札連合を牽引しなくてはならない。 〈顧客に合わせ提供設計も多様化〉 EPRは国際原子力市場のおいて大きなポテンシャルがあることから、その競争力をさらに高め、設計・建設の合理化を一層進めるため、英国でEPRの建設を始める前に、フィンランドと国内で進行中のEPR建設計画から経験をフィードバックすることが大切だ。 また、多様化する顧客ニーズに合わせて、中型炉など提供製品の多様化も必要。三菱重工とアレバ社が開発しているATMEA1の認証作業を急がなくてはならない。 ルスリー報告書に基づく基本方針は同日、同報告書を審査した原子力政策審議会にサルコジ大統領が出席した後、大統領府コミュニケと合わせて公表された。 その中で大統領府は、近年、激しい対立が表面化していたEDFとアレバ社の連携合意の一環として、EDFによるアレバ社株取得の可能性を審査すると明言。アレバ社は昨年来、各事業における能力増強のために外部からの資本注入を計画しており、年末までに最大15%を増資し、候補である日本の三菱重工やクウェートおよびカタール政府のファンドなどと交渉することになっていた。コミュニケにはEDFによる増資比率は明記されていないが、分析家の間では現在の比率の2.4%を7%程度に上げるものと見られている。 |
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