エジプト 建設サイトをエル・ダバに正式決定 年内に国際入札準備へ

エジプトのH.ムバラク大統領は8月25日、地中海に面した西部のエル・ダバを同国初の原子力発電所建設サイトとして正式決定するとともに、今年末までに国際入札の準備を整えるなど、2019年の完成を目指した同建設計画の開始を指示した。同国は人口増加に伴う電力需要拡大への対処や生活水準の向上を目指して、原子力の導入を検討していたが、チェルノブイリ事故後に一時中断。同プログラムへの着手を07年10月に正式に公表して以来、計画はようやく本格的な動きを見せ始めた。

エジプトは20年以上前から第一陣の商業用原子力発電所としてエル・ダバに100万kW級PWRを2基建設する計画を掲げていたが、最終的なサイトの選択に当たっては様々な議論があった。07年11月に国際原子力機関(IAEA)が派遣した専門家は、エル・ダバが原子炉の設置に最も適すると評価。また、昨年夏には電力エネルギー省が、エル・ダバを含む複数の候補地の中で同地がベストな選択となり得るか否かの詳細な調査を実施した。これら複数の調査結果に基づき、同地は観光事業への影響を考慮しても理想的なサイトとの結論に達したとしている。

今回の決定は、電力エネルギー大臣や財務大臣、貿易産業大臣を含む関係閣僚らとの2時間半におよんだ会合の中で大統領が下した。この会合の中で大統領は、年末までに踏むべき手順として、入札準備のほかに次のような点が重要だと指摘した。すなわち、3月に議会が承認した原子力および放射線関連活動の規制法に基づき、電力省とは独立の立場で原子力発電所の建設や操業、および高いレベルの安全基準遵守を監視するための原子力安全当局を設置すること、原子力関係人材の養成プログラムをIAEAなどとの協力により迅速かつ効率的に進めること――などだ。

同会合ではまた、財務大臣が原子力発電所建設費の資金調達に関していくつかのオプションを提示。国が全額負担するのか、その他との混合方式とするのかなどについて、大統領は今後、定期会合を開いて検討するとしている。建設費は100万kW級原子炉1基あたりで15億〜40億ドルと試算したと見られている。

国際入札の手配については、政府が昨年6月、豪州のウォーリー・パーソンズ社に同建設計画のコンサルティングを依頼していることから、同社が行うことになると電力エネルギー相が明言。今後の業務は2段階に分かれるとしており、建設サイトの選定後は、原子炉設計の仕様や技術的および財政的な評価に3年半をかける。これに続く第2段階では、建設サイトでのその後の業務や試運転、および国内送電網への接続などで5年半を想定している。

同相はまた、原子力発電所での平和利用目的に限定したウラン鉱石の生産について、同国の核燃料当局が仏国やロシア、中国の専門家の支援を得て、経済性評価のための現地調査をマルサ・アラムその他の鉱山で実施する計画を明らかにしている。


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