インド議会が原賠法案可決 供給業者にも賠償責任

インド議会では8月25日、下院が賠償金額の上限を150億ルピーに引き上げるなどの条項を盛り込んだ原子力損害賠償に関する民事責任法案を可決、これに続き30日には上院も同法案を可決した。

原賠法は、透明性と予見可能性の高い賠償責任体制下で諸外国の原子力企業がインドの原子力市場に参入するには不可欠の条件。しかし現在、欧米諸国の関連法がすべて、原子力事業者に対してのみ賠償措置を義務付けているのに対し、インドの法案は原子炉機器供給業者も賠償責任を問われる可能性がある。このため、諸外国がインド市場への参入に二の足を踏むことも考えられ、手放しに歓迎とは言い難い状況だ。

同法案の修正を勧告したのは議会の科学技術・環境・森林常任委員会。インド国民の利益を最大限に反映したものとなるよう、関係閣僚だけでなく一般からの意見も聴取して審査した。その結果、原案の第6条で50億ルピーと明記されていた事業者の賠償上限は150億ルピーに引き上げられた。

また、同委は第17条で「品質の悪い材料、欠陥機器等の供給が原因となった原子力事故」について言及。事業者は供給業者との契約においてその利益を確保しなくてはならないとし、「事故の被害者に対する補償後、供給業者に対して求償権を行使できる」と修正するよう勧告していた。この修正は、1984年にボパールの外資系化学工場事故で一晩に2000人以上の住民がガス中毒死した際、賠償責任の所在が明瞭にならなかった教訓から、野党などの意見を汲んで盛り込まれたと言われている。

現在、原子力の損害賠償に関する国際条約である(1)改正パリ条約(2)改正ウィーン条約(3)補完的補償条約――では事業者の賠償措置のみを規定しているため、今後インドがこれらに加盟する場合は、これらに準じて国内法を修正する必要がある。また、今のところ、これらのうち発効済みなのは(2)だけ(日本は3つとも非加盟)であり、国内法のみで海外からの原子力導入も可能だが、被害者への賠償の後に事業者から供給業者へ求償される可能性が残ることの課題は大きい。

同法案は今後、P.パーティル大統領の署名をもって成立する。


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