ドイツ 原発継続へ回帰 エネ新計画に盛込む 脱原発政策、2基廃止で転換

A.メルケル首相率いるドイツ政府与党は5日、原子力発電所17基の運転期間を平均12年延長することで合意した。9月28日に、連邦政府の新たなエネルギー計画の一環として閣議決定する。これが実現すれば、与党キリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)は、昨年総選挙時の公約を果たすことになる。年内にも、決められた発電枠を使い切り廃止される見込みだった現在運転中の独最古のRWE電力ビブリスA原子力発電所(PWR、122万5000kW)も、運転を継続できる見通しとなった。01年の社会民主党(SPD)連立政権時に脱原子力政策に転換したドイツは、03年にシュターデ、05年にオブリッヒハイムの2基の発電所を廃止し、依然新設は認められないものの、推進政策に踏みとどまった。

5日・日曜日は午前中から首相官邸に主要閣僚と連立与党幹部が続々詰めかけ、話し合いは延々12時間以上に及んだ。

同日深夜、官邸から出てきたN.レトゲン連邦環境相(CDU)とR.ブリューデレ連邦経済相(FDP)は、疲れきった表情ながら笑みをたたえて、共同記者会見に臨んだ。

もともとレトゲン環境相は原子力発電所の大幅延長に批判的で、長期の延長を望むブリューデレ経済相と、事あるごとに対立してきた。しかし、このときばかりは、仲睦まじい姿を報道陣の前に演出してみせた。

両者は次の3点で政府与党が最終的に合意したことを宣言した。

(1)現在ドイツで運転中の原子力発電所の運転可能年数を平均12年間延長する。具体的には、70年代に運転開始した原子力発電所7基を8年間、そしてそれ以降に運転開始した10基を14年間、各々延長する。

(2)原子力発電事業者に核燃料税を課す。その総額を年あたり23億ユーロとし、2011年から16年までの6年限定とする。

(3)再生可能エネルギー基金を設立し、原子炉運転者が年2〜3億ユーロ払い込む。15億ユーロを上限とする。

以上は、原子力発電事業者と政府与党の妥協の産物でもある。事業者はこれまで、核燃料税の導入に反対してきたが、それが6年限定であること、また運転延長期間が平均12年に延びることによって、採算が合うと判断したようだ。ビブリスAも運転開始から47年間、日本の敦賀1号程度の期間を確保した。

今回の合意の背景には、8月30日に公表された「エネルギーシナリオ」報告書がある。スイスのプログノス社など3社に委託されたこの報告書は、原子力発電所の運転延長期間を4年、12年、20年、28年の4ケースを想定し、それぞれの経済面、環境面での影響をシナリオ分析した画期的な内容となっている。

その結論は、原子力発電所の運転期間を延長すれば、経済全体や雇用面で良い影響を及ぼすのみならず、地球温暖化対策にも資する、というものであった。

そのような報告を受けたメルケル首相の決断は早く、昨年総選挙以降の与野党内の議論に決着を付けた。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで