【インタビュー】クウェート原子力委・代表団が来日 「20年以降の導入目指す」

原子力発電の導入を検討中のクウェートから、国家原子力委員会(KAEC)のA.ビシャラ事務局長(=写真)を含む同委員会委員と関係官僚ら4名が、4日から約1週間の滞在日程で訪日した。6日には東京港区の原子力産業協会を訪れ、服部理事長を始めとする同協会幹部、および産業界から日立GEニュークリア、三菱重工業、東芝の3社の代表を交えて懇談を行った。これには在日クウェート大使館のA.オテイビ特命全権大使も同席した。

クウェートを含めた中東6か国で構成される湾岸協力会議(GCC)は、2006年12月に6か国共同で原子力発電開発計画に着手する意向を表明したが、現在までのところ、具体的な建設契約締結まで計画を進めたのはアラブ首長国連邦(UAE)のみ。

これら産油国では、石油が潤沢なうちに次の世代のための産業・生活インフラを整備しておく方針でいるものの、もうすでに電力や水の需要が2020年手前頃に賄えなくなる恐れも出てきている。

そのため、電力を再生可能エネルギーや原子力で賄う戦略へのシフトが検討されている。クウェートは電力需要への対処に加えて水資源の97%を海水淡水化に依存しており、原子力への期待は大きい。

原産新聞では、09年3月にナーセル首相がトップとなって発足させた、ハイ・レベルの国家原子力委員会による原子力導入を巡る活動等について、ビシャラ事務局長にインタビューした。

――貴国における原子力発電の位置づけは?

ビシャラ事務局長 原子力は今後、中・長期的な電力需要を賄う重要な発電オプションの1つ。過去2、30年間で我が国の電力需要は年率約7%増加しており、省エネをしても3〜5%の上昇は避けられない。このため、現在の発電容量の1100万kWに原子力などを加え、今後20年で2500万kWまで拡大する方針だ。

また、石油は輸出すれば外貨を稼げるが、我が国ではその生産量の約12%を国内発電に回すなど、電源は石油に大きく依存している(06年実績で73%)。70年代に一度、原子力導入を検討したものの、80年代の石油価格低迷により、計画は棚上げされていた。

現在、導入に際して必要となる課題――法整備、財源、マンパワー、立地、および諸外国との協力関係など――について過去数年間に実施したFSが最終段階に来ており、結果は政府内で議論した後、公表する予定だ。

――導入までの具体的なスケジュールは?

事務局長 まだ完全に決まっていないが、2020年以降、22年頃までを目処にしている。最終的な判断までには、一部で必要項目の調査が残っている。今回の来日も、国際的なレベルで様々な国の技術を評価するのが目的だ。

――日本の原子力産業界に期待することは?

事務局長 日本とクウェートは来年、外交樹立後50周年の節目を迎えるなど親交が深く、商業ビジネスにおいても重要な位置を占める強力なパートナー。すでに原子力以外の発電設備を我が国で操業している企業もあり、今後のチャンスにつながるかもしれない。

日本はまた、他国から導入した技術を吸収して国産化したという実績があることから、ビジネス的な側面に加えて、国民の理解・支援を求める方法や人材育成でも支援を期待している。


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