六ヶ所 再処理完成が延期 2012年の完工目指す 日本原燃 「安全を最優先に」

日本原燃は10日、六ヶ所再処理工場のしゅん工時期を今年10月から12年10月に2年間延期する工事計画変更を、経済産業省に届け出るとともに、同施設を立地する青森県および六ヶ所村に対し報告した。06年3月のアクティブ試験開始以降で、再処理工場のしゅん工時期変更は、これで9度目だが、2年押しの大幅な延期は初めてのこと。同社では、今回の工程変更について、アクティブ試験を「安全を最優先に慎重に進める」ことを柱に見直したものとしている。

六ヶ所再処理工場のアクティブ試験は、試運転における最終段階として、実際に使用済み燃料を用いて、施設全体の機能、性能、安全性を確認するもの。現在、ガラス溶融炉の流下ノズル閉塞、天井レンガ脱落、高レベル廃液漏えいなどにより、最終ステップの段階で滞っているものの、これまでに、およそ400トンの使用済み燃料が処理された。

これらを踏まえ、今回の工程見直しに当たって、原燃では、アクティブ試験を確実に成功させるため、(1)ガラス溶融炉の温度管理を確実なものとするため温度計の追加設置などの必要な設備改善(2)ガラス固化試験に当たり実規模モックアップ試験装置(KMOC)と実機の比較検証を実施し段階的にデータを確認(3)現場経験を踏まえて確実に実行できる作業計画と裕度を持たせた全体工程を策定(4)安定運転に万全を期すため固化セル内の機器の点検を継続して実施――の4方策に取り組むこととした。

作業工程としては、KMOC試験で得た模擬性能を確認するため、実廃液を入れていないB系ガラス溶融炉での施工、確認を、A系に先行して実施することとしており、まず、11年度内を目途に、溶融炉温度計追加設置工事等、続いて事前確認試験をB系、A系の順に行うが、A系では、工事に先立ち溶融炉内の残留物除去も行う。その後、12年10月まで、最終的なガラス固化試験を実施する。

また、原燃(資本金2000億円)では合わせて、再処理工場しゅん工後の本格操業に向けた各種建屋の増設を始め、MOX燃料加工、ウラン濃縮、返還廃棄物貯蔵など、各事業の進捗に伴う設備投資が必要となることから、「財務基盤強化策」として、第三者割当の募集株式発行による4000億円の増資を提案することとした。正式には、22日の株主総会後となるが、増資の引き受け先は、原子力発電所を運転する10電力会社が中心となる。

原燃の川井吉彦社長は10日の記者会見で、工程変更となった再処理工場の12年10月しゅん工を目指し、「不退転の決意で全力で取り組む」と述べた。

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三村申吾・青森県知事と古川健治・六ヶ所村長は10日、六ヶ所再処理工場のしゅん工延期の報告を受けて、直嶋正行経済産業大臣を訪れ、核燃料サイクル政策に関する国の取組姿勢の確認を求めるなどした。

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清水正孝・電気事業連合会会長は10日の定例会見で、日本原燃による第三者割当増資について、核燃料サイクル確立の重要性を改めて強調するとともに、引き続き業界を挙げて同社を支援していく姿勢を示した。


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