南ア PBMR開発計画は中止 財政問題クリアできず

なお、南ア政府は先月、ペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(黒鉛球状燃料、ヘリウム冷却)(PBMR)開発プロジェクトへの今後の投資は打ち切るとの判断を下している。同炉の潜在的な顧客や投資パートナーの確保などで行き詰まった模様で、新型炉開発で現実的な問題をクリアする難しさが露呈される結果となった。

PBMRは国営電力のESKOM社が2014年の導入を計画していた電気出力16.5万kW(熱出力40万kW)の小型ガス炉で、750℃の水蒸気を供給する蒸気発生器とで構成される。炉心溶融の心配がなく安全性が高いのが特徴。初期投資が少なくて済み、送電線が本格的に整備されていない地域にも適したプラントとして位置付けられていた。

開発を担当していたPBMR社はESKOM社が大株主となって設立したもので、ウェスチングハウス(WH)社が株式の一部を保有。日本の三菱重工業も2001年に発電機のFSで同計画に参加したほか、今年2月には熱出力を20万kWに半減させた実証炉の共同開発で合意していた。

開発中止決定は公共企業省のB.ホーガン大臣が議会下院における演説の中で明らかにした。中止の判断理由としては、@固定の顧客や追加の投資パートナーが確保できないA計画を継続すれば少なくとも300億ランドの追加投資が必要B計画の節目毎に期限を設けなかったため、実証モデル初号機の建設を何度も先送りC今年5月に米国の次世代原子炉開発計画(NGNP)からWH社が撤退したため、PBMRを同社チームの設計として参加させる機会を失ったD近い将来、南アが原子炉を建設する場合、PBMRのような研究・設計段階の第4世代炉ではなく第2か第3世代を検討E近年の経済不況により開発の優先順位が変更された――などを挙げている。

同相はまた、こうした背景により、内閣がPBMR計画の今後について次のような勧告案を承認したことを明らかにした。すなわち、@PBMRを今後、「保存整備モード」に置き、その資産と知的所有権保護のため特定の職員を当たらせるAそれ以外の職員は削減するB南ア核燃料公社(NECSA)の燃料開発工場には廃止措置を取り、ヘリウム試験施設は密封管理下に置くC原子力の主要技術を開発保持するプログラムを設置するD政府は大学における原子力学士コースの維持を支援するEPBMR計画を過去に遡って審査し、教訓を学ぶ――など。

同相によると、これまでの10年間にPBMR計画に費やされた金額は合計92億4400万ランド。このうち80.3%にあたる74億1900万ランドを南ア政府が負担しており、残りのうち8.8%をESKOM社、WH社と産業開発公社(IDC)がそれぞれ4.9%ずつ、米国のエクセロン社が1.1%を投資した。


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