【原子力発電 人材育成の息吹】(4)−国際編− 原子力教育ルネサンス(2) 福井工業大学 中安文男教授に聞く 実践的現場リーダー育成 原子力立地県のメリット生かす北陸のJR福井駅から西に約2キロメートル、タクシーで約10分のところに福井工業大学はある。街中の工学部単科大学といった風情だ。 学校法人・金井学園経営の同大学は、前身の「北陸電気学校」として1950年4月に設立され、59年に現在の地に移転。そして、65年4月からいまの福井工業大学(電気工学科、機械工学科)となる。その後、各工学系の学科を加え、05年4月から「原子力技術応用工学科」(定員20名)を設置し今日に至る。 大学全体の学生数は現在約1700名で、原子力専攻はないが大学院工学研究科には73名が在籍する。 原子力開発の初期のころから原子力分野へ学生を輩出してきた私立大学の東海大学(01年から学生募集停止、10年から再開)や近畿大学(02年から募集停止)が、「原子力工学系」の学科の維持に苦慮してきた時期での、「原子力技術応用工学科」の新設だった。 学生の出身地をみると、県内半分、県外半分程度の傾向となっている。福井県内には、特に南の嶺南地方には関西電力の美浜、大飯、高浜の各原子力発電所、日本原子力発電の敦賀原子力発電所があり、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」や旧新型転換炉「ふげん」(廃止措置中)という、開発段階の発電炉が集中立地する原子力開発の一大拠点を抱えている。敦賀原子力発電所では日本初の新型で大型の加圧水型軽水炉APWRとなる敦賀3、4号機の増設計画が進んでおり、これから本体建設工事の活況期を迎えようとしている。 県外からは関西圏や、やはり原子力発電所が立地する茨城県、静岡県などからが多いという。原子力にほとんど関係のない長野県などからの学生もいる。 世界的な原子力の再評価傾向や、国内産業の不況の影響で、相対的に安定産業と見なされる傾向がでてきた原子力関連企業の魅力が増し、学生はじめその親も、以前のような「原子力」を避けたいという傾向はなくなってきている。 従って最近では、入学定員割れということもなく、来年の卒業生も含め3回の卒業生の就職率も100%を確保している。 授業の内容は、@基本的な原子力専門の知識A放射線取扱主任者や技術士補などの資格取得Bコミュニケーション能力の向上――に力点を置いている。基礎的能力としては、機械・電気などの基礎力、英語力、情報処理能力の向上などにも合わせて力を注いでいる。 具体的には、入学初年次から学生に工学英語を学習させるため、学生よりも英語教師の説得に努力して導入したこと、高い倫理観をもった専門職の育成を図るために原子力学会・倫理委員会の先生方との対話、同学会シニア・ネットワークとの交流、1年生から院生までをいっしょにした「寺子屋式授業」などを通じてコミュニケーション能力の向上を図るなど、工夫を重ねている。 原子力立地県にある大学の特長をいかして、原子力機構や電力会社などへの夏休みを活用したインターンシップ派遣、学生が原子力施設のPR館などで来館者に直接説明する実体験などの機会も豊富に設け、強制的ではなく、多くの学生が積極的に参加しているという。ときには、青森県の燃料サイクル施設や岐阜県瑞浪市の超深地層研究所などの見学などにも出かける。これらの活動をより活発に行うため、文部科学省や経済産業省の競争的資金に積極的に応募し採択されて、予算が確保されている。 学生の多くは地方勤務をいとわず、現場の責任者として成長することを志している。 (河野 清記者) |
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