独電力と政府の協定案 来年からの施行に向け、議会審議中

ドイツの原子力発電事業者は今後、全17基の原子力発電所の運転期間を平均12年間、延長できる見通しである。しかしその代わり、核燃料税の納税とエネルギー気候基金への払い込みという2つの義務を負う。これらに関する法案は、すでに連邦議会で審議が進んでいる。政府与党は参院審議を省略する方針で、2011年1月1日付けの施行を目指している。

原産新聞では今号から2回にわたり、このうちエネルギー気候基金への払い込み条件を連邦政府と事業者の間で確認した協定案の訳文を掲載する。このなかで事業者は、政権交代など、将来の不測の事態に備え、精一杯の自衛策を講じている。

協定案は9月6日に合意され、9日に公表された。しかし、「事業者を利する秘密協定だ」と野党が激しく追及、全文公開を政府に求めた。政府はこれに応え、27日に全文を公表した。結局、秘密の部分は何もなかった。(本訳文は6日版を底本としたが、訳出にあたって27日版も適時参照し、重要事項の漏れがないよう努めた)

ドイツ連邦政府は、きわめて大きなエネルギー・気候政策上の課題を解決するため、原子力発電所の運転期間を延長する決定を下した。

連邦政府委託のエネルギー・シナリオが2010年8月27日に提出された。それによると、原子力発電所の運転期間を延長すれば、国民経済に明白なプラスの効果をもたらすばかりか、輸入リスクを限定し、電力価格も抑制されることがわかった。それゆえ、原子力発電所の高い安全水準を維持しつつ、運転期間を延長することが適切な方策と考えられる。これによって、再生可能エネルギー時代への移行期でも、経済的で、クリーンで、安定したエネルギー供給という目標を達成できる。その際、原発の安全確保こそ、最優先となる。所管当局が原子力法等の法的枠組みに基づいて設定している原発に対する安全要件やバックフィット要件の範囲を、以下の合意事項は制約するものではない。

原発の運転期間延長は、それにより電力会社に入る追加利益の一部を還元する仕組みと一体である。ドイツにおけるエネルギー効率化や再生可能エネルギーの拡張を加速化することに、この財源を使うべきである。この点こそ、長期的な観点から原子力発電を放棄していくための決定的な前提条件である。

連邦政府は、以上のような背景に基づき、次の促進基金協定の締結を決定した。

ドイツ連邦共和国及び原子力発電所運転会社とその親会社の間の促進基金協定(2010年9月6日付けの案)

1.協定の締約者
・連邦財務省を代表とするドイツ連邦共和国
・電力会社4社(E・ON、EnBW、RWE、バッテンフォール)
・原子力発電所運転会社9社

2.前文
・電力会社が所有する原子力発電所運転会社は、全部で17基の原子力発電所を運転している。これら原子力発電所は、原子力法に基づき、2000年1月1日以降の残余発電電力量を各々割り当てられている。その発電分が終わると、出力運転の権利が消失する(発電枠を移譲する権利は留保される)。
・連邦政府はエネルギー計画の一環として、原子力法附則3を改正して、原子力発電所の運転期間を延長するとともに、同計画を実施するための追加の促進措置を講じる立法措置を予定している。
・電力会社は、本協定に応じて、また本協定の前提条件のもと、運転期間の延長で得た収益の中から、持続可能なエネルギー供給を促進するための促進拠出金を払う用意がある。「持続可能なエネルギー供給」とは、なかでも再生可能エネルギー、蓄電技術、エネ効率化、および熱併給発電をいう。
・そのほか連邦政府は、本協定とは別個に、核燃料税法案に基づき、核燃料税を徴収する立法措置を予定している。核燃料税徴収の法的許容性をめぐって、電力会社や原子力発電所運転会社が著しく大きな疑念を抱いていることを、連邦政府は承知している。また、本協定のいかんにかかわらず、彼らが早くも株式法上の根拠から、核燃料税法や徴税に反対する法的措置の余地を残しておかざるをえないと考えていることも、連邦政府は承知している。(3章以下、次号に続く)


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