ドイツ連邦政府と原子力事業者の協定文
前号に引き続き、両者が9月6日に合意した協定文の残りの部分を掲載する。
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3.促進拠出金
・原子力発電所運転会社が2017年以降、運転期間の延長による発電電力を送電網に追加併入した場合(自家消費分除く)、同会社は同じ年、併入電力量MWh(延長分の発電電力量)ごとに促進拠出金を支払う。エネルギー計画を実施する促進措置の財源として、連邦が設立した特別資産にこれを払い込む。促進拠出金は、MWhあたり9ユーロとする。本協定の締約者は、促進拠出金を収入中立的に配分する方法を検討する。また、消費者物価指数の推移や、累積的な観点からドイツのベースロード電力先物取引の推移も考慮しつつ、促進拠出金の額を変更できる。
・消費者物価指数(全世帯、基準年2005年を100とする)の2011年1月1日以降の変化率(%)に比例して、促進拠出金の額を2017年1月1日付けで増減させる。その後は、各年1月1日付けで増減させる。
・ドイツのベースロード電力先物取引の基準に基づいて調整する場合は、MWhあたり53.83ユーロを当初価格とする。消費者物価指数(全世帯、基準年2005年を100とする)の2011年1月1日以降の変化率(%)に比例して、この当初価格を2017年1月1日付けで増減させる。その後は、各年1月1日付けで増減させる。ドイツのベースロード電力先物取引におけるn年の電力供給分を対象に、その2年前の年の12か月加重平均値が、調整済みの当初価格を10.17ユーロ以上上回る場合、超過分の半分だけn年の促進拠出金を調整する。ドイツのベースロード電力先物取引におけるn年の電力供給分を対象に、その2年前の年の12か月加重平均値が、調整済みの当初価格を43ユーロ以上下回る場合、下回った分の半分だけn年の促進拠出金を調整する。
・協定締約者は2019年に、前述の調整ルールの運用経験に基づき、運転期間延長に由来する利益調整の観点から、本協定の基本にある締約者の意図が適切なものであるかどうかを、共同で検証する。そのような検証に際して、電力価格の推移はもちろん、原子力発電所運転会社/電力会社の負担する総費用も検討する。締約者は必要に応じて、適切な変更に関して合意できる。
・2017年以降に支払い義務を負う促進拠出金に対する払い戻し不可能な前払金として、原子力発電所運転会社はそのつど、個別債務者として、附則Cとして添付した割当表に従って、2011年と2012年に年間総額3億ユーロ、2013年から2016年には年間総額2億ユーロを基金に払い込む。核燃料税またはそれに類する税の徴収額が年間23億ユーロを超えた場合、その超過額だけ年間の前払金を減額する。2011年から2015年までのいずれか1年の税徴収額が、23億ユーロを超え、年間前払金の額も上回った場合、その上回った分を、2016年を含む翌年度以降に繰り越す。この繰越分はまず、年間最大23億ユーロの税額を補填するのにあてるが、それでもまだ余る場合は、年間前払金を減額するのに使う。それでも清算されない繰越分は、さらに翌年度以降に繰り越す。電力生産量を移譲せずに原子力発電所を閉鎖する場合、前払金も消滅する。2011年から2016年まで支払われた前払金の合計を、2017年から2022年までの促進拠出金に、各々同一の年率で繰り入れる。前払金がこの期間の促進拠出金として、なお清算されない場合、翌年度以降に繰り越して清算する。
・(@)租税、拠出金もしくは原子力発電企業に特に関係するその他の公課によって、本協定に基づく支払い額が増える場合、または(A)本協定に基づく支払いもしくは核燃料税が、税法上控除可能な事業経費として無条件に認められない場合、それから生じた額の分だけ、促進拠出金と前払金を減額する。
・発電電力量を移譲する場合、本協定に由来する権利と義務も、それと同じ比率で移転する。発電電力量を移譲する場合、移譲した側の前払い義務は、移譲した時点で消滅する。
・各々の電力会社は、附則Aに従って合算した原子力発電所の各社持分に比例して、本協定に基づく原子力発電所運転会社の義務を果たすことを保証する。残余の発電量を移譲する場合、移譲を受けた電力会社は、その移譲から発生する義務を果たすことも保証する。
4.促進拠出金の軽減
・以下の場合に、当該年度と翌年度以降を対象に、促進拠出金を減額する。
(@)原子力発電所全体または個々の原子力発電所が、
(a)運転期間の延長と発電電力量の移譲に関する規定が、附則Bから逸脱して規制され、短縮され、変更され、無効になり、取り消され、もしくはその他の方法で消滅した場合、もしくは
(b)2010年9月6日以降に定められるバックフィット要件もしくは安全要件を実施する額が、該当する原子力発電所について総額5億ユーロを超える場合、運転延長期間の残余の発電量を対象に、規定の変更もしくはさらなるバックフィット・安全要件の実施によって発生する追加負担分を、当該原子力発電所の発電電力量MWhあたりに換算して減額する。または、
(A)プルトニウム239/241 、ウラン233/235 1グラムあたり145ユーロを超える税率の核燃料税もしくはそれに類する税が徴収される場合、または2011年から2016年までの期間を超えて徴収される場合、またはそれ以外の税、租税公課もしくはその他の負担が導入、設定され、もしくは引き上げられたとき、それによって核燃料サイクル(最終処分含む)、原子力発電、原子力発電電力の配電や取引との関連で支払い義務が設定され、もしくは引き上げられた場合、それらによって発生する追加負担分を、発電電力量MWhあたりに換算して減額する。
・促進拠出金がマイナスになるまで減額することはしない。ただし、発電電力量を移譲する側の原子力発電所の経済的な運転を確保する必要がある場合、ある原子力発電所持分の促進拠出金の計算上のマイナス分を、同じ電力会社の別の原子力発電所持分の促進拠出金に繰り入れてもよい。
・前出4(@)(b)の意味におけるバックフィット要件と安全要件とは、必要な安全改善措置と施設状態の改善対策のすべてをいう。しかし、原子力法に基づく通常運転の保守経費まで含まない。具体的には、原子力法第七d条に基づく措置を実施するのを目的とした支出、原子力法第七条に基づく変更許可に伴い必要となる支出、原子力法第17条、19条、19a条に基づく官庁の同意もしくは命令により施設の安全水準を改善するのを目的とする支出がこれに含まれる。いずれの場合も、バックフィット要件や安全要件に関係した措置でなければならない。この意味における支出には、そのような措置の同意や許可を得る手続きに伴い支出される経費も含む。
5.効力の発生
本協定の効力は、以下の条件に基づく。
・運転期間の延長と発電電力量の移譲に関する規定が、附則Bに従って効力を発生すること。
・2010年9月末までに本協定を仮署名する。議会審議の終了をもって本署名を行う。
・運用期間を2011年1月1日以降とする。 (以下、雑則等省略)
2010年9月6日、ボン
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