ECが廃棄物の最終処分で指令案 4年以内に計画の提示要請

欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(EC)は3日、放射性廃棄物最終処分の安全基準となるEU指令案をEU加盟国に提案した。原子炉および医療・研究施設から出る使用済み燃料と放射性廃棄物が最終処分に至るすべての段階で、各国が国際的な安全基準を適用するよう法的拘束力をもたせるほか、各国がいつ頃、どこで、どのような処分場を建設する方針であるかを示した「国家計画」を2015年末までに策定・提出するよう求めている。03年に提示した同様の指令案と比較すると、処分スケジュールに年限を設けない緩やかな内容で、域内共通の管理・法制度構築に向けたEUの決意が滲み出たものになっている。

ECが03年にEU閣僚理事会に提出した指令案では、@08年までに廃棄物の最終処分サイトを決定A高レベル廃棄物(HLW)については18年までに処分場の操業を開始B低・中レベル廃棄物は13年までに操業開始――などを義務付けていたため、加盟国が反発。ECは翌04年、欧州議会の作成した「具体的な年限を明記しない修正案」を再び理事会にかけたが、最終的な採択には至らなかった。

今回の案では、加盟国は同指令案が理事会で採択されてから2年以内(2013年)に同指令を国内法に盛り込むほか、4年以内(15年末)に「国家計画」を提出しなければならない。

ただし同計画は、加盟国が4年以内に処分場サイトを選定するよう意図したものではなく、複数の候補地に関する分析活動や、いつ頃までに決定を下すかなど、処分場の建設開発計画について加盟国に文書で説明させるのが趣旨だ。

また、原子力を利用するすべての加盟国に対して、あらゆる段階の使用済み燃料と放射性廃棄物の管理と最終処分について、国際原子力機関(IAEA)の安全基準に照らして策定した共通の基準を適用させる法的強制力を持つ枠組みとなる。

ECの説明によると、1956年に英国でコールダーホール原子力発電所が運開してから50年以上が経過したにもかかわらず、域内には未だに1つの最終処分場も存在しない。域内では毎年、原子力発電所や医薬品、研究活動などから7000立方メートルのHLWが発生するが、その多くが中間貯蔵中。使用済み燃料を再処理したHLWは再利用できず、永久処分が必要だとしている。

ECはまた、中間貯蔵は使用済み燃料棒やHLWから残留熱を除去し、放射線レベルを下げるために必要だが、継続的な管理・監督が必要なことから長期的な解決方法とは言えないと強調。地表やそれに近い位置での放射性廃棄物貯蔵には、航空機の衝突や火災、地震などのリスクもあると指摘した。

こうした背景からECは、IAEAその他の科学者や専門家は深地層での長期的な処分が最適との見解で一致していると断言。フィンランドが2020年、スウェーデンが23年、および仏国で25年に最終処分場の操業開始を予定しているのに続いて、域内の放射性廃棄物の処分対策を加速していきたいとしている。

〈指令案の具体的な項目〉

@加盟国は、同指令案が(来年)採択されてから4年以内に、最終処分場の建設と操業計画、処分の実施に必要となる諸活動のスケジュール、コスト見積もり、資金調達構想などを明記した「国家計画」を策定しなければならない。

A国家計画はECが修正を要請する可能性があり、加盟国は必ず提出すること。

B複数の国のいずれか一国に処分場を建設し共同使用することも可能だが、廃棄物を処分目的でEU域外に持ち出してはならない。

C加盟国は関連情報を国民に周知しなくてはならない。また、関連の意志決定手続きにも参加させるべきである。

D個別の処分場の安全解析審査や建設の認可手続きを独立の機関に担わせるなど、IAEAが策定した安全基準に法的な拘束力を持たせる。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで