中国国際原子力シンポジウム 13年からACPR輸出へ原子力発電と燃料サイクルの開発利用に関する業界団体である世界原子力協会(WNA)は中国原子力産業協会(CNEA)と共催で、「中国国際原子力シンポジウム」を11月23日から25日まで北京で開催した。インドと並んで今後、大規模な原子力開発の中心国になるとして注目を浴びる同国が、開発の進展状況を国際会議の場で全面的に公開したのは初めて。世界13か国から160人の関係者が出席した。原子力発電に投資している3事業者が発電および燃料供給に関する計画の概要や人材育成プログラム等を紹介したほか、今後新たに原子力発電への参入を希望する大手電力も今後の戦略計画を披露。自主開発炉と自負するCPR1000の技術を第3世代レベルに発展させたACPR1000の輸出を、2013年から開始するといった意欲的な発言が場内を驚かせた。(石井明子記者) まず、開催者のCNEAが中国の原子力発電開発全般について説明した。2007年に国務院が公表した原子力発電の中長期発展計画で、中国は2020年時点の運転中設備容量を4000万kW、建設中を1800万kWに設定したが、温室効果ガスの排出量削減政策等により、政府はこの運転目標を2倍近い7000万kWに改訂しつつある。 中国政府はすでに、34基・3692万kWの計画を初期承認しており、このうち26基・2838万kWが建設中。世界で建設中の原子炉の約4割に相当するが、目標値の達成には投資規模もそれに応じて拡大していき、1kWあたりの投資額は1万2000人民元、総額1兆元を超える計算だ。すなわち、20年までの10年間に年間700億元以上が原子力とその関連産業に投資されることになる。原子力機器の大量生産と商業化には、高品質の要求項目や技術強化、長期間の製造サイクル、複雑な製造管理といった問題があり、投資額の約5割が費やされる見通し。企業としては、上海電気や東方電気、ハルピン電気、第一および第二重型機械集団等が原子炉系統設備のみならずタービン発電設備、燃料供給システムなど大型重機器の鋳鍛造や製造で技術経験を積んでおり、国産化率は85%に達している。 AP1000のような第3世代原子炉についても国産化を進めていく方針で、安全文化を強化しつつ技術力の改善にも積極的に投資。国産の原子炉製造能力がいずれは国際市場でも大きな立場を占めていくだろう。 CNNC発表 中国核工業集団公司(CNNC)は1955年に国営機関として創設された。今後の使命は、革新的な技術にさらなる改良を加えることで、クリーンで安全かつ効率的なエネルギーである原子力は中国が経済の活性化と持続的な発展を遂げるための重要なツール。「高度に効率的な開発」を原則として大量生産段階に入るが、開発の戦略的な管理、特化技術、人的資源、管理の標準化などがその際の基本指針となる。 重要事業を「原子力発電」と「核燃料」の2つに大別するとともに、支援事業を@原子力機器供給産業A原子力環境エンジニアリング産業Bウラン産業C海外との科学産業交易D核技術の応用産業E非原子力供給産業――に分類した。 これまでに開発した原子炉設計としては、秦山Tやパキスタンに輸出したチャシュマ1、2号機となった出力30万kWの「CP300(※これまでの呼称であるCNPを今後はCPに統一)」、秦山U期1〜4号機および建設中の昌江発電所1、2号機で採用した60万kWの「CP600」、準備段階の福清5、6号機で採用する「CP1000」などがある。 今後はこれらをさらに発展させたACP600および同1000に加えて、出力10万kWのモジュール式小型炉となるACP100を電熱併給・海水脱塩用として研究開発するほか、ウェスチングハウス社製・第3世代原子炉のAP1000についても技術移転を進める。また、今年7月に初臨界に達した高速実験炉CEFRに続く商業規模の高速実証炉を開発していく計画だ。 CGNPC発表 中国広東核電集団有限公司(CGNPC)は1978年に広東省で大亜湾原子力発電所T期の準備作業を開始。その後、嶺澳原子力発電所および嶺澳2期工事と順調に開発を続けている。 現在、CGNPCが政府から準備作業を認可されている建設計画は23基・2652万kWあり、このうち15基は着工済み。仏国の原子炉技術(M310)をベースに国産化したCPR1000が主流で、嶺澳発電所2期工事や紅沿河発電所、寧徳発電所、陽江発電所、防城港発電所で採用している。 同設計に32項目の技術改良を加えて開発中なのがCPR1000+で、前述の紅沿河、寧徳、陽江でも採用する。仏国から導入した欧州加圧水型炉(EPR)は台山原子力発電所で建設中。第3世代設計のAP1000としては、CNNCの三門発電所と中国電力投資集団公司の海陽発電所で4基が建設されているのに加え、CGNPCが内陸部の湖北省咸寧発電所として2基建設する。 さらに、厳しい安全要求項目をクリアできるようCPR1000+に徹底的な改良を加えたのがACPR1000で、2013年以降の輸出を目標に開発を進めている。同炉を第3世代たらしめる一部の知的財産権問題を技術革新でクリアすれば、国際市場への輸出が可能となる計画だ。 大量生産方式と機器製造技術の国産化により、CGNPCの建設コストは1kWあたり1500米ドルまで改善されつつある。 発電所の運転員育成に関しては原子力訓練協会が、原子力発電所の@管理AエンジニアリングB運転C教育――の分野で訓練システムを設置。CGNPCの職員2万1000名のうち1万5000名が原子力専門家であるほか、600名は運転員としての訓練を受けた。また、約800名は安全運転監督官として教育を受けている。 |
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