【原子力発電 人材育成の息吹】(10)−国内編− 原子力教育ルネサンス(8) 韓国電力・国際原子力大学院大学 計画前倒し、来年9月に開校 国内外若手の実務教育に力 研究から設計、運転・保守まで全方位

昨年12月、400億ドル規模のUAEの原子力発電所4基建設プロジェクトを受注した韓国。受注成功から間もない今年1月には、国家戦略的に原子力発電を輸出産業に育成する政策を打ち出し、2030年までに80基の原子炉輸出という大目標を掲げた。

国際原子力専門大学院大学の設立

韓国は、世界展開を見すえて原子力産業を発展させてきた。原子力産業の成長を支える人材基盤の強化についても、国際機関との積極的な協力や韓国が主宰しての人材育成プログラムなど、意欲的に取り組む。こうしたなか、世界初といわれる国際原子力専門大学院が設立されることとなった。原子力ルネッサンスをリードする実務型若手人材育成の拠点としたい考えだ。

名称は「韓国電力・国際原子力大学院大学」。UAEへの原子炉輸出により弾みがつき、開校予定を当初計画より半年前倒しし、2011年9月とした。建設地は韓国東南部・蔚山市蔚州郡で、約1万8000mの敷地規模だ。隣接する新古里原子力発電所では現在、UAEに供給するAPR1400・2基を含め4基が建設中で、韓国で最初に運転開始した古里原子力発電所にもほど近い。今年7月には、大学院理事長を務める金雙秀韓国電力社長はじめ、同大学院の国際諮問委員など関係者が参加して建設着工式が挙行された。

教育課程は2年ずつの博士・修士コースで構成。理論に基づく専門知識を教える以上に、個別カリキュラムに基づき、実務経験豊富な教授陣を通じて現場実習も含め学生に集中的に原子力発電所の技術・運営について専門知識を習得させることを重視する。APR1400の技術に関する講義も組み込まれる。

各学年100名で構成され、韓国人と外国人が50%ずつ。全課程で英語により授業が行われるという。

韓国では、同大学院のほか、全国で原子力発電に関する教育を特に強化する大学を10校指定した上で、原子力産業界のニーズに合致する実務型人材を養成する計画を打ち出している。

原子力発電人材の需給展望と育成対策

韓国政府は今年10月、国内原子力発電所の建設・運転に加え、UAEでの建設や今後の新規輸出等で、2020年までに2万3900人と、現在の2倍以上にのぼる新たな原子力人材の需要が見込まれるとして、設計、調達、運転・保守、研究開発等での人材の確保に向けた総合的な「原子力発電人材需給の展望と育成対策」を明らかにした。

具体的な方策としては、(1)短期的に即戦力となる人材の確保には、インターンシップの実施、原子力発電教育特化大学の創設、職業訓練教育の改編等の対策を取る(2)中長期的な高度専門人材の育成では、世界水準の原子力研究開発の中核となる大学の振興や原子力発電輸出支援の人材育成等をはかる(3)人材育成基盤の構築に関しては、人材需給予測モデルの開発、原子力学科の増設・新設促進――などが挙げられている。

この対策のもと、2020年までに合計1万1900名を育成する一方、残りは既存の大学等の卒業生を採用し、現場での職業教育を通じて原子力人材として確保していく計画だ。人材のレベルごとに定量的な育成目標も提示された。博士・修士レベルでは、約3200人を「国際原子力大学院大学」や原子力発電教育特化大学等を通じて育成していく。大学卒業レベルの人材は、原子力発電教育「特化」大学や原子力発電所でのインターンシップ等を通じて、約6800名を育成。このほか、技能者レベルは、職業訓練教育特化課程や原子力発電マイスター校での教育により、1760名規模の人材を育てていくとしている。

新規導入国の人材育成にも力

今年8月には、UAEの科学技術大学等から48名を国内の技術専門学校で受け入れ、輸出するAPR1400の建設現場実習も行った。UAEプロジェクトの一環として専門人材育成に協力するもので、今後も毎年50名程度を受け入れるという。10月に出された人材育成対策では、新規導入国の人材育成協力にも力を入れており、将来の有望な輸出先国の人材教育を支援することで、韓国型原子炉の輸出促進にもつなげたい考えだ。

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原子力のグローバル化が進むなか、人材の確保・育成は各国の原子力利用の維持・強化のみならず、自国の原子力をアピールする機会拡大にも通ずる。各国が特色ある人材育成プログラムを打ち出した上で、連携・共有を通じて、世界的に安全で効果的な原子力技術の利用拡大につながっていけば原子力の発展に大いに寄与するものとなる。 (木下雅仁記者)(このシリーズ了)


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