仏国とインド:2018年に運開へ EPR建設で枠組み合意仏アレバ社は6日、インド南西部のジャイタプールに出力165万kWの欧州加圧水型炉(EPR)2基を建設するとともに、原子炉燃料を25年間供給するための枠組み合意文書にインド原子力発電公社(NPCIL)と調印した。1500億ドル規模という巨大なインドの民生用原子力市場を前に、原賠法関係の課題により米国企業が足踏み状態のなか、仏国は総額70億ユーロと言われる大規模な取引で一早く先鞭を付け、強固なビジネス基盤を築く考え。来年初頭から、サイト掘削のための調査やインド安全規制当局の承認手続き、サイトに適合する詳細な機器構成設定などを開始し、2018年の初号機運開を目指す。 今回の合意は、2009年2月に両者が結んだ覚書(MOU)に基づいており、さらに4基の増設オプション付き。仏国のN.サルコジ大統領による4日から7日までのインド訪問に際して決定したもので、これに先立ち、インドの環境森林省は11月28日付けで、ジャイタプールにEPR6基を建設する計画に環境許可を発給していた。 両国が合意した重要協力事項は、インドに対する(1)EPR蒸気供給系(NI)と燃料の供給(2)サイトでの準備作業開始に関する事項のほか、(3)EPR協力実施に伴う技術データ・情報の機密性防護に関わる二国間協定(4)EPR関係の知的所有権拡散を制限する二国間協定(5)仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)と印原子力省(DAE)の原子力分野における研究開発協力――など。さらに、両国双方の安全当局や放射線防護研究所、廃棄物管理担当局同士の協力に関する覚書も結ばれている。 インドの新しい原子力損害賠償責任法は8月に同国議会を通過し、現在、大統領の署名を待っている段階。しかし、欧米の原賠法と異なり、原子力事故時に供給業者も賠償責任を求められる可能性があるため、米国系業者の一部はインドとの取引に懸念を抱いているという。この件についてアレバ社のA.ローベルジョンCEOは、「原賠法は交渉の妨げとはならなかった。それより、炉寿命を迎えるまで地元電力事業者の管理下にある原子力発電所のどこに賠償責任が行くべきか、規制当局が考慮する必要がある」と述べた模様。また、仏印首脳が公表した共同声明文にも、「開発協力の助けとなるような枠組み設定のため、両国が協議を続けていく」との一文が明記された。 〈今後の開発計画〉 NPCILでは原子力開発がこのまま順調に進めば、インドの原子力設備容量は2012年に728万kW、17年に1008万kWに達すると予測。さらに20年末までに2000万kW、32年には6300万kWまで拡大していく方針だ。 これらを達成するため、新たに70万kW級の国産PHWRを内陸部のハリヤナ州に4基、マディヤ・プラデシュ州で2基建設する計画を公表している。 EPR以外の導入炉としては、西海岸のグジャラート州ミティ・ビルディと東海岸のアンドラ・プラデシュ州コバダに米国製原子炉用のサイトを確保。09年にウェスチングハウス(WH)社とGE日立ニュークリア社がそれぞれ、地元企業と協力覚書を結んでいる。 また、現在クダンクラムで建設中のロシア型PWR(VVER)2基に、さらに4基を増設。西ベンガル州ハリプールでも6基のVVERを建設する準備活動を開始している。 〈カクラパー3、4着工〉 インド原子力発電公社(NPCIL)は11月22日、グジャラート州のカクラパー原子力発電所(KAPP)で3、4号機(各70万kW)のコンクリート打設を実施した。 両炉ともインドがカナダのCANDU炉技術をベースに開発した加圧重水炉(PHWR)で、今年1月に開始した敷地の掘削作業は、NPCILとしては過去最短の4か月間で完了。NPCILはまた、今年8月にインド中央部のラジャスタン原子力発電所サイトでKAPP‐3、4号機と同型・同出力の7、8号機の基礎掘削を開始しており、これら4基のPHWRはそれぞれ、2015年と16年に営業運転を開始する予定になっている。 〈カイガ4は初臨界〉 NPCILはさらに、インド南西部のカルナータカ州で建設中だったカイガ原子力発電所4号機が11月27日付けで初臨界に達したと発表した(=写真)。 同国で20基目の商業炉となる同炉はKAPP3、4号機と同じくインドの独自開発によるPHWRで、出力は22万kW。同国の運転中原子炉の総設備容量は478万kWとなった。同炉に装荷した原子燃料はすでに稼働中の1〜3号機と同様、国内生産したウランが原料。同炉からの発電電力は地元カルナータカ州を始め、タミル・ナドゥ州やアンドラ・プラデシュ州などの周辺5州に供給される。 同炉の運開により、NPCILではインドが米国、仏国、日本、ロシア、韓国に次いで20基以上の商業炉を操業する6番目の国になると強調。同国ではこのほか、クダンクラムのロシア型PWR(VVER)2基やカルパッカムの高速増殖原型炉(PFBR)が近年、建設工事の最終段階に到達した。 また、今年だけでも70万kW級のPHWR4基で相次いでコンクリート打設や掘削工事を実施するなど、同国の原子力開発速度は急速に早まっている。 |
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