原燃工めぐる公取判断公開 WH・UK社が52%取得 独禁法上の考え情報公開や説明責任の重要性が指摘される中で、公正取引委員会も多くの独占禁止法上の指針や判断などを公開するようになってきている。 その中で、東芝の子会社となったウェスチングハウス(WH)UK社(本社・英国)が、2009年5月、日本の原子燃料工業(本社・東京、資本金10億円)の株式の52%取得を計画したときの、独禁法第10条(株式保有の制限)上の判断についても詳細な内容を公開した。 現在商業用の原子力発電所は大きく分けて、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)があり、燃料もそれぞれの型にあった燃料が使用される。原子燃料工業は住友電気工業と古河電気工業が折半出資で72年に設立。BWRとPWR両方の燃料を国内供給してきた。 WH社およびその関連会社は、海外では継続的にBWRとPWRの燃料供給事業を行っているものの、ここ数年は日本国内には納入実績はない。 その他の国内メーカーとしては、PWR用燃料では三菱原子燃料会社が、BWR用燃料ではWH社の親会社である東芝が、日立製作所と米国に本社を置くGE社と共に設立したグローバル・ニュークリア・フュエル・ホールディング社(GNF―H)の子会社であるグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン社(GNF―J)がある。 また、海外メーカーであるAREVA社およびGNF―Hの子会社である米国のグローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ社(GNF―A)の燃料も少量ながら輸入されている。 公正取引委員会の集計資料によれば、国内のPWR燃料のシェアは三菱グループ約60%、原子燃料工業約40%、AREVA0〜5%。BWR燃料シェアはGNF―J約65%、原子燃料工業約30%、GNF―A0〜5%、AREVA0〜5%となっている。 燃料供給には初装荷燃料と取替燃料があるが、07年度の国内市場規模は初装荷燃料の納入実績はなく、取替燃料のみでPWR約230億円、BWR約150億円規模。 〈原燃工とGNFとの「結合関係」〉 WHグループは、日本国内ではBWR燃料の納入実績はなく、実質的に事業を行っていないことから、原子燃料工業との関係では潜在的競争者の立場にとどまるものの、WHグループの親会社である東芝が、BWR燃料事業を行っているGNF―Jの親会社であるGNF―Hの株式を間接的に22%(他はGE社60%、日立18%)を保有している。 そのため、独禁法上の懸念事項としては、東芝およびWHグループと、GNFグループとの間に結合関係が形成されていることとなる場合には、本件において、WHグループが原子燃料工業の株式を所有することを通じて、競争関係にある原子燃料工業とGNFグループとの間にも結合関係が形成されることとなる結果、両社の合算市場シェア・順位は約95%・第1位と極めて高くなり、新規参入圧力なども認められないことから、単独行動または協調的行動により、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあった、と評価した。 〈東芝がGNFから役員引揚げ〉 そこで東芝は06年、WHグループの株式取得の際、欧州委員会(EC)との間で、(1)東芝およびその子会社はGNFグループから取締役等すべての役員を引き揚げ、将来にわたって派遣を行わない(2)東芝は、例外的に認められたものを除き、GNFグループにおける燃料供給事業に係る営業情報の非公開情報を取得するすべての権利を放棄する(3)GNFの合弁契約上、東芝に与えられたグローバル・ニュークリア・フュエル社(GNF―Hの運営を受託している会社=GNF)の経営に関する拒否権を放棄する――との3点に合意することを条件にして、承認を受けた。GNFグループに出資する他のGE社、日立とも合意した。 〈GNFへの出資22%から15%へ〉 それでも公正取引委員会では、東芝が建設した原子炉への初装荷燃料については、いままでGNF―Jが供給しており、東芝のGNF―Hへの出資比率が22%であることから、「WH社およびGNFグループ双方の事業の成果に強い利害を有していると考えられる」との懸念を東芝に指摘。 これを受けて同社は、「東芝がGNF―Hから得られる経済的利益の比率を、2年以内に15%未満まで引き下げる」と申しでたことから、同委では、この措置が確実に実施されれば、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならない」と判断したことを明らかにしている。 |
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