原子力学会 研究炉のあり方で報告書 世界の流れに遅れる日本

日本原子力学会の「将来必要となる共同利用に供する研究施設検討特別専門委員会」(主査=三島嘉一郎・原子力安全システム研究所技術システム研究所長)はこのほど、日本の将来の新研究炉など共同利用研究施設の具体的検討を早急に開始すべきとする報告書を取りまとめた。

「将来必要となる共同利用研究施設について」と題するこの報告書では、日本は原子力開発の初期段階から大学に研究炉を設置し、研究開発と人材育成に精力的に取り組んできたものの、最近ではそれらの多くはすでに設置から40年以上を経過し、東京大学の弥生炉は2011年3月には運転停止されるような状態であり、「我が国の研究炉を将来どうするかは喫緊の課題となっている」と強調している。

海外では、世界の4分の1の研究炉が米国・カナダで運転され、フランスや韓国、中国、豪州などでは最新の研究炉が建設または運転が開始され、研究目的のみでなく、Mo―99の生産など産業分野での研究炉利用が積極的に進められようとしている、と指摘している。

原子力委員会が原子力政策大綱の見直しを検討しようとしているところから、将来の我が国が保有すべき研究炉やホットラボなどの共同利用研究施設とは、どのようなものかについて、調査・検討したもの。同学会の関連部会の会員や材料研究、中性子科学などの研究者にアンケート調査も行った。

その結果、エネルギー開発や中性子利用を目的とした研究炉の設置が望ましく、(1)高速〜熱中性子が利用できる高速多目的炉(2)軽水炉の燃料・材料実証、中性子科学における中性子利用、半導体製造を目的とした大型多目的炉(3)将来の人材育成を考慮した臨界集合体規模の小型原子炉――の3案について、国内外の利用者の把握、燃料調達方法、建設や運営の費用などの観点からも、さらに具体化の検討を進めるべき、と訴えている。

また、ホットラボについても、研究炉に併設して照射後試験などを合理的に実施できる機能統合型施設にすることが期待される、としている。ただ、利用者には材料研究者や燃料開発者などのヘビーユーザーと、基礎研究を行う大学や民間研究者などのライトユーザーがいることから、このバランスを考慮することが必要だ、と指摘している。


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