米エクセロン社、冷却塔設置問題で オイスタークリーク 炉を前倒し閉鎖へ

米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は8日、ニュージャージー(NJ)州のオイスタークリーク原子力発電所(=写真)は2019年で操業を停止するとの方針を明らかにした。現行の運転認可は2029年まで有効だが、地元NJ州の環境保護局(DEP)は冷却水の取放水に関する認可の更新条件として冷却塔の設置を義務付ける方針であるため、その建設費など7億〜8億ドルという経済的な影響を勘案すると10年前倒しで閉鎖するのが最も得策と判断したもの。米国ではその他の州でも、取放水による環境への悪影響軽減という観点から、その規制が強化される方向に動いており、冷却塔使用などの閉鎖循環方式でなければ操業継続が難しくなる原子力発電所が増えるのではとの懸念が広がっている。

米国では発電所での取放水は「水清浄法」によって規制されており、温排水の放出がやむを得ない場合は環境への被害を最小限にする技術の導入を前提に排出源ごとの許可(NPDES)を環境保護庁(EPA)が発給。NPDESは5年ごとに更新手続きが必要で、更新時にモニタリングや新たな排出防止対策導入の可能性が検討される。取放水に関わる条項としては取水施設の設計技術指針(316条b)などがあり、近い過去では2001年から06年にかけてEPAが3段階に分けて指針を公表していた。

具体的な審査や指導は州政府などが行うことになっており、オイスター炉が立地するニュージャージー州のDEPでは今年1月、連邦政府の規制条項を満たすには閉鎖循環方式がベストと位置付け、ワンス・スルー(OTC)方式で取放水されているバーニガット湾の生態系保護のため、冷却塔を建設するようエクセロン社に要請。「閉鎖循環方式は水生生物にとって一層健全であり、地元住民の生活の質向上にもつながる」と説明し、州政府の許可(NJPDES)更新の条件になることを言明していた。

DEPはその後、2月と3月にこの件に関する公聴会を実施したほか、州民から2000通のコメントを収集。現在、その分析作業中である。

〈カリフォルニア州の動向〉

カリフォルニア州では今年5月、州の水資源管理委員会(SWRCB)が「水清浄法」316条bの実施、および冷却水取水による環境被害軽減のため、OTCシステムを使用する19の発電施設(うち2つは原子力発電所)に対して、取水量および取水影響を閉鎖循環方式と同レベルに下げるための技術基準案を公表した。

同基準は10月1日付けで発効しているが、州内の2原発は温室効果ガスを出さない重要なベース・ロード電源であるという事情を考慮し、サン・オノフレおよびディアブロ・キャニオンの両原子力発電所では、基準達成に向けて必要となる項目を評価するため特別調査が実施されることになった。

来年1月1日以降、SWRCBが選定した第三者機関が基準達成のための複数の対策選択肢についてコストや達成能力等を評価。SWRCBの設置する審査委員会が来年10月までにパブコメ用の報告書を作成するほか、13年10月までに最終報告書を作成するという段取りになっている。


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