IAEAの燃料バンク 理事会で設置が決定

国際原子力機関(IAEA)の理事会は3日、核燃料サイクル施設を持たない選択をした加盟国に対して低濃縮ウラン(LEU)の供給を支援する「LEUバンク」の設置を決定した。

これは米国の非政府組織である「核脅威イニシアティブ(NTI)」が提案していた核燃料供給保証構想で、今年3月に創設合意したロシアの「国際ウラン濃縮センター(IUEC)」とともに、昨年11月の理事会で承認されていた。ロシアのIUECは濃縮を含めた核燃料サイクル・サービスをIAEAの管理下で差別無く提供するのに対し、IAEAのLEUバンクは、(1)加盟国の原子力発電所でLEUの供給が途絶し、国家間の調整その他の方法で解決しない(2)核燃料の移転など、核不拡散上の問題がない(3)IAEAの包括的保障措置を受け入れる――の3条件を事務局長が確認した上で、IAEA自身が備蓄・管理するLEUを市場価格で提供する。

加盟国が自前の核燃料生産施設を設置する権利を損なう性質のものではないが、インドやエジプトなど非同盟運動(NAM)諸国は、原子力平和利用の権利の制限や「持つ国」と「持たざる国」の二分化につながるなど、懸念を表明している。

IAEAは100万kW級PWR1基のフル炉心分LEUをホスト国内に備蓄することになるが、その購入経費や運転資金としては、提案国である米国が08会計年度の一括歳出法から約5000万ドル、ノルウェーが500万ドルをすでに拠出済み。このほか、クウェートとアラブ首長国連邦(UAE)がそれぞれ1000万ドルずつ、NTIが5000万ドル、および欧州連合が2500万ユーロの拠出を表明している。

LEU受領国は、発電用燃料以外への使用や軍事用への転用、さらなる濃縮、再処理・再輸出等の実施を禁じられているほか、LEUホスト国同様、IAEAの保障措置協定に加えて同安全基準、核物質防護策の適用が義務付けられる予定だ。

なお、ロシアの原子力総合企業であるロスアトム社は1日、ロシア南部のアンガルスクでIUEC用に濃縮度2〜4.95%(4.95%は全量の3分の1以下)の六フッ化ウラン120トンの備蓄が完了したと発表した。100万kW級軽水炉2基分のフル炉心装荷に十分な量。

技術上および商業上の事由と無関係に、LEU供給の途絶したIAEA加盟国が同理事会の審査をクリアすればIUECからLEUの供給を受けられる。

また、申請時点で原子炉を保有していない国でも参加が可能で、核不拡散の要請を両立させつつ関心を持つ国すべてに原子力エネルギーへのアクセスを与えることを目指している。


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