「教訓生かしていない」 地層処分で 田中教授講演田中知・東京大学工学系研究科教授(=写真)は、原子力環境整備・資金管理センターが昨年開催した報告会で講演を行い、これまでの国内外の事例を踏まえ、地層処分地選定作業を加速するための方策を述べた。 田中教授はまず、国内で地層処分地選定が進まない背景について、(1)関心を持った地域への適切な対応とそれを踏まえての改善がない(2)海外の良例・失敗例の分析が不十分(3)実施主体と特定法ができたことで業界全体の慢心があった可能性(4)国の消極性――をあげる一方で、(1)公な議論(2)早い段階での法整備(3)2つの地下研究所での調査開始(4)処分場建設資金の積立(5)十分な交付金(6)地道な理解活動――などを一応評価した。さらに、海外での事例から、(1)「原子力業界の問題」から「国家の問題」へといかに意識改革できるか(2)実施主体あるいは国家の強権的なサイト選定はいずれかの段階で頓挫あるいは根本的再検討が迫られる(3)歓迎ムード醸成後の推進は高い確率で成功(4)国会・推進行政機関・規制行政機関・実施主体を統合した戦略的なサイト選定プログラムを構築する必要――を、共通する教訓として指摘している。 また、最近、日本学術会議や東京大学が開催した地層処分に関するシンポジウムを振り返り、人文・社会科学的見地から問題点を掘り起こすなどした。その上で、今後のサイト選定加速のため取組姿勢として、(1)解決のための全体像を理解した戦略的かつ現実的な対応(2)国民理解の醸成(3)NIMBY問題の解決(4)実効的な国の関与(5)事業主体・発生者の一段の努力(6)決定・実行のプロセスの理解と実行(7)学術協会の重要性――を掲げたほか、「基盤は技術」として、継続した研究開発、技術開発の重要性を強調した。 また田中教授は“余興”として、今回講演会場となった日本科学未来館のある東京都・お台場に“処分場誘致が表明”されると仮定した「思考実験」を披露し、問題の掘り下げと想定される課題・効能の項目を列挙したほか、出身地である大阪・岸和田市で有名な「だんじり」を引き合いに、日本の祭の根底にある「リセット文化」を指摘し、原点に戻って議論し直す必要も示すなどした。 |
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