〈胸を張って原子力〉 立地地域主導の新息吹(1) 文部科学省 研究開発局長 藤木 完治氏に聞く 地域・大学・国が協働 「原子力COE」を展望、世界へ発信政府の新成長戦略で投資の重点が物から人≠ヨシフトするとともに、グローバルイノベーションの渦中に立つ今、原子力立地地域主導で地元の大学と密接に連携、国の支援を得ながら21世紀の「原子力COE(卓越した研究拠点)都市」を標榜するポジティブな新息吹が台頭してきた。文科省、経産省の原子力政策責任者および国内原子力3拠点の首長に聞く。(本シリーズのインタビューは、中 英昌編集顧問) ― 日本がオールジャパン体制でベトナム第2期原発建設商談獲得に成功、原子力グローバル競争時代の幕が開いた。原子力国際展開について文科省の取り組みは。 藤木 文科省は昨年、政府の政策コンテストで「インフラパッケージ展開」を提案、その主眼は日本の持つ原子力の強みを生かし日本発の技術”を世界に根づかせることにより、日本が産業的にもそこに入り込んでいくような展望を描けるよう支援することにある。これは文科省だけでなく、経産省、外務省、内閣官房はじめ政府が一体となって取り組まなければ実現できないが、それ以前に「日本の技術や人材が世界水準より上」になければ画餅に終わる。 日本の原子力の底力は、1つは核燃料・FBRサイクルで世界をリードすることにあると思うが、もう一点、原子力のポテンシャル全般を今後も維持して世界へ展開していくことがより現実的な重要課題だ。その場合、今後ベトナムをはじめ原子力発電所(軽水炉)を新規導入する発展途上国向けパッケージ輸出で問われてくるのは、単に優れた製造技術でプラントを建設するだけでなく、相手国にとって安全かつ有意義な原子力開発に日本が貢献するという姿勢が大事になる。 そのため、相手国に技術が根づき、それを使いこなす人材が根づくところで日本が支援していく観点から文科省は今、国際原子力人材育成のさまざまな施策に取り組もうとしている。それには、まず国内の原子力の基礎水準をしっかり維持・向上させ、それを世界に展開していくことが肝要であり、日本の1つのこれからの原子力の方向性だと思う。 ― 昨年11月に藤木局長が呼びかけ人となり、オールジャパンの教育版「国際原子力人材育成ネットワーク」が産官学一体となり設立されたのも、その一環か。 藤木 原子力は総合科学技術の複合体で、その人材育成の一番の要は大学での高等教育にあるが、世界的な原子力冬の時代≠ノ大きく後退・弱体化した。ようやく最近、地球温暖化議論の高まりや原子力の復権に伴い、原子力の求人も増加しているため、大学でも全国レベルで原子力工学科・専攻数が倍増、学生の人気も熱を帯び「原子力教育ルネサンス元年」との認識も浸透しつつあるが、私は高等教育における原子力人材育成を国策としてさらに一層強化しなければいけないと痛感している。 たとえば原産協会の調査によると、日本がこれから原子力国際展開で一定の世界シェアを確保するには、現在、国内の原子力技術者数約3万5000人を5万5000人ぐらいにふやさないと、輸出に齟齬をきたす。昨年末に「国際原子力人材ネットワーク」を立ち上げたのも、そうした危機感が背景にあり、国内的な人材育成に今後一層注力する一方、海外で原子力に取り組もうとする人材も日本に受け入れ、日本の技術体系をしっかりマスターさせたい。日本で学んだ若者が本国に帰り、それぞれの国で日本の技術体系を主とした原子力体系が根付くことを念頭に置き、海外の人材育成にもぜひ力を入れていきたい。(2面に続く) |
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