「胸を張って原子力」 「人材育成・国際展開」の両拠点に

(1面から続く)

―そうした流れとも相呼応するように原子力立地地域が今、地元の大学と連携し人材育成、研究開発等の国際的拠点をめざしているがどうか。

藤木 最近、原子力発電所の立地地域から発信されるさまざまな構想を非常に心強く思う。というのは、これまで原子力は立地地域にとってリスクを伴う施設を受け入れる負担の代償として国が何らかの支援策を講じるといった形の受け身的な地域振興策≠受け入れてきた印象が強かったが、最近その流れに変革の兆しが出てきた。

文科省関係では、たとえば茨城県東海村の原子力センター構想が今まさに検討・具体化の段階に入り、また福井県のエネルギー研究開発拠点化構想は既に現実化、進展しつつあり、さらに青森県の原子力人材育成・研究開発構想も今、具体的取り組みが進んでいる。いずれも、それぞれの地域が自らのために、自らの意志と力で立ち上がり、原子力施設の存在をネガティブではなくポジティブに捉え、積極的に活用していこうとする新しい動きだ。その中身は、立地している原子力施設で将来必ず必要となる原子力の人材を育て、また原子力の将来に役立つ新技術を自らの地域の産業の中に根づかせていこうという発想が非常に強い。

特に各地域の計画・構想の中で特徴的なのは、その核に大学の存在があることだ。茨城県東海村の構想では茨城大学や高エネルギー加速器研究機構、青森県では弘前大学や八戸工大、福井県では福井大学や福井工大があり、公私を問わず地域主導の新構想に積極的に参画している。これにもちろん、日本原子力研究開発機構(JAEA)もあらゆる次元で横断的に参画・協力している。

こうした大学や研究機関を拠点の中心として考えているだけに、その発想が人材を非常に重視した構想になっている。原子力の研究開発等から生れるスピンオフ技術の産業化に意を払うことも大事ながら、より長期的に見れば、原子力を支えるのは人材だし、人材を育てるのに最適な場所はどこかといえば、まさに原子力の実地教材と共存している発電所立地地域だ。

―さらに、エネルギー利用のみならず総合科学技術の集積地・「低炭素モデル都市」の原子力COEとして世界に発信していく気概も感じ取れる。

藤木 まさに、世界のCOEを展望する意義は大きい。東海村ではJ‐PARC、福井県では「もんじゅ」、青森県では六ヶ所の再処理施設や熱核融合実験炉(ITER)研究拠点など、世界に誇れる原子力の拠点が現に存在するので、それこそが地域の特色だと考え、COE構想の原点になっている。また、そういう動きが加わることで「人材育成と国際展開の両方の拠点」になり得る。

それだけに立地地域はこれから大変重要な役割を担うことになろう。もともと原子力は地域との連携なしには進められない分野だけに、地元地域で原子力を迷惑施設≠ニか負の遺産≠フようなネガティブな捉え方をするのではなく、むしろ、それぞれの地域がそれぞれの国際的特色、人材育成の特質等を積極的に打ち出し、国と「よし、一緒にやろう!」という思いで人材育成のみならず原子力COEにしようと取り組んでもらえることは、大変斬新な心強い構想であり新しい風≠セ。

私は、今後トータルとして見れば、日本は原子力を骨格・大きな柱として成長し、世界に展開していくようになるのは間違いないと確信している。少なくとも、原子力を抜きに日本の将来、成長を語ることはできないと考えるので、原子力をしっかり支えることが今の文科省の決意である。


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