【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(1) 地球ができる前からあった放射線・放射性物質

原子力産業新聞では、「分かりやすさ」を主眼にして説明する「原子力ワンポイント」コーナーを設けました。今回のシリーズは、「広く利用されている放射線」がテーマです。

理科好きの女子高生「ゆりちゃん」の質問に、ものしり博士の「タクさん」が回答する形式で、米国の著名な学者のアラン E.ウォルター著「放射線と現代生活」の「アトムとともに暮らす1日」にあるように、日々の生活を豊かにしてくれる放射線について、また、人の目には見えないけれど、私たちの身の周りにある放射線について、解説します。

できればこのシリーズが、読者の方が、ご家族や知人に放射線について話していただく際の参考になればと願っています。

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ビッグバンや超新星爆発などでガンマ線が発生しました。また、放射性物質も作られました。地球ができる前から、放射線は宇宙にあったので、今でも地球に放射線として降り注いでいます。 

(1)宇宙で生まれた放射線

ゆりちゃん 放射線とは何かを聞きたいのですが、その前に、放射線はどのように生まれたのか教えて下さい。

タクさん 放射線は宇宙で生まれました。星は一生を終えるときに爆発することがあります。これを超新星爆発と言いますが、この際、非常に波長が短く強烈で、ものを突き抜ける力も大きく、電気を帯びていない電磁波が宇宙に放出されます。この電磁波がガンマ線と呼ばれる放射線です。

ゆりちゃん もう少し具体的に、宇宙の誕生と放射線の関係について教えて下さい。

タクさん 観測によると、宇宙は約137億年前にビッグバンと呼ばれる大爆発で生まれましたが、その時の爆発のエネルギーが電子や陽子、中性子に姿を変えました。さらに陽子と中性子が結合して原子核ができ、水素やヘリウムができました。これらが集まって巨大なガスのかたまりになり、そこから最初の星や銀河が誕生しました。星の内部では水素やヘリウムなどが融合して、より重いホウ素・炭素・鉄などになり、やがて星は寿命を迎えると爆発したり、静かに崩壊して星くずとなります。爆発する場合にガンマ線が放出されました。

ゆりちゃん 宇宙で作られた放射線はガンマ線だけですか?

タクさん いいえ。この超新星爆発と同時に、鉄よりも重い物質が作られ宇宙にばらまかれたと考えられています。この物質はまた集まって星になることを繰り返しますが、星を作った物質の中には、放射線を出すものもたくさんあります。どんな放射線が出るかは、具体的には別の機会に話したいと思います。

ゆりちゃん それでは地球ができる前から放射線はあったのですか?

タクさん そうです。約46億年前に星くずが集まって太陽や地球が生まれましたが、放射線は太陽や地球が生まれる前から宇宙にありました。そして誕生当時の地球は、宇宙から降り注ぐ宇宙線と大地から放出される放射線で満ち溢れていました。小惑星イトカワから帰ってきた小惑星探査機「はやぶさ」も、放射線を浴びながら宇宙を飛行していました。(原産協会・政策推進部


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