〈胸を張って原子力〉 立地地域主導の新息吹(3)茨城県東海村長 村上 達也氏に聞く 「反原子力」はアンチテーゼ 21世紀型「原子力センター」掲げ世界へ―東海村はわが国の原子力発祥の地・パイオニアとして半世紀にわたり原子力利用を先導すると同時に、村民を巻き込む国内最悪のJCO臨界事故等の試練にも対峙してきた。村政4期目を迎えた村上村長の胸の内は。 村上 私は昨年までの東海村長3期12年間に絶えず訴え、実行してきたことは、村政の基軸を経済発展主義思想から住民の生活支援を重視した東海村における「福祉国家」への転換・脱却である。福祉、教育、環境、農業を4本柱に「人・自然・文化が響き合うまち」を基本理念とした第4次総合計画を推進してきた。4期目に入り現在、平成23年度からの第5次総合計画を策定中で、いわば起承転結の結¢コ政集大成の時との位置づけだ。結≠ヘ終わりではなく同時にスタートする次期10カ年計画の起≠ナもあり、選挙公約に東海村を「世界の原子力センター(COE)」にする新構想を掲げ、3月までに最終計画をまとめる。 私が1997年に東海村長に就任した当時は、95年末の「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故はじめ事故やトラブルが頻発、原子力が曲がり角の踊り場にあった。しかも、99年9月に東海村で放射能被曝死者が出るJCO臨界事故が起きるに至り、「これで東海村も我々もおしまいか」と本心思い、村民の退避も決死の覚悟で決断した。いわば、私の村長としての原子力とのかかわりは、こうした「事故が起点」になっている。 それだけに、事あるごとに「原子力はエネルギー安全保障と温暖化対策から日本にはなくてはならないとか、電力需要も右肩上がりで増大する」という話ばかり聞かされたが、私はそうはならないと思っていた。 ―でも今や、国家成長戦略の一翼を担う期待も大きいのではないか。 村上 私は、その「国家成長戦略」という言葉が大嫌いだ。もう成長だけで真の豊かさは得られないし、1000兆円に迫る巨額の借金を抱えている日本は今後、経済成長より、いかに墜落≠オないで坂を下るかというものの考え方が大事だと思う。だから、民主党政権になり、日本が生きる将来像のひとつが「コンクリートから人へ」、「国民の生活第一」だったのではないか。 ―村上村長は「反原子力」との声があるのは、そういう背景からか。 村上 いや、皆さんがそういう烙印を押してくれているだけだ。東海村の就業者の約3割および商売関係者の多くが原子力関係産業に依存し、村の財政も東京電力の火力発電も含め6割を依存、「東海村マイナス原子力=ゼロ」のような地域の村政を預かる身で反原子力≠ナは無責任過ぎる。 ただ、役所や学者の意見を単に鵜呑みにし率先垂範するだけでは、村民のためにも地域の発展にもつながらない。問題解決には、定立(テーゼ)があれば反定立を立てて検証し、解答を得ていくのが常道だ。その結果、我々は独自の路線を進もう、それには今までの歴史や文化、それに新しく生まれてくるものすべてを統合して東海村の将来を切り開いていこうとの思いが強い。それを公の場で率直に口にすると反原子力≠フ烙印を押されただけのことで、まったく心外だ。 それにしても今、「国を挙げて原子力ルネサンスだ、エネルギー確保だとか、新成長戦略として原発ビジネスの国際展開だ、さあ、その競争に負けるな」と突出し、期待することには疑問を感じる。もっと、経済面だけでなく人材教育・開発や核セキュリティーあるいは安全規制についてしっかり文化を共有することを優先しないと「国家経営」を間違うのではないか。 (2面に続く) |
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