【胸を張って原子力】 「地域との共生」モデルケース

(1面から続く)

―原子力現場技術者や国際展開に必要な人材育成、さらにはサプライチェーン企業群の国際競争力強化にどのように取り組んでいくのか。

細野 国内外で原子力事業を推進していくためには、これを支えるエンジニアや、プラント建設、運転、保守に携わる人材の育成や技術力の向上、継承が不可欠だ。このため、経済産業省としても、現場でメンテナンス等を担う人材の技能の維持・向上を支援している。また、海外人材についても原子力導入を図る諸外国の人材育成等に対する協力について、ベトナム等11か国と原子力協力文書を結んでいる。

さらに、人材育成協力を一元的に実施する窓口として、09年に「原子力国際協力センター」(JICC)を設立、専門家派遣や研修生の受け入れ等を実施している。合わせて、昨年11月には、わが国の原子力関係各機関が相互に連携・協力し、一体となって各種の原子力人材育成活動や事業等を効率的、効果的に推進することを目的に、「原子力人材育成ネットワーク」が設立された。

一方、個人のスキルアップや人材育成だけでなく、産業全体としても技術力の維持・強化を図っていくことは極めて重要である。このため、経済産業省としては、「戦略的原子力技術利用高度化推進事業」を立ち上げ、原子力発電に必須の部材・素材メーカーを支援し、国際競争力強化につなげつつある。

さらに、昨年8月に施行された低炭素投資促進法では、原子力を低炭素型産業と明確に位置づけ、原子力関連の生産設備投資を行う製造業に対し、公的金融による低利融資を行う制度を構築した。今後とも、原子力産業の技術力強化を図り、厚みのある産業基盤の維持・発展に努めたい。

―ところで、茨城県や福井県に代表されるように、国内の原子力施設立地地域が今それぞれの特性を生かして、「世界の原子力COE」を 目指して自主的・積極的に立ち上がり始めたが、経産省のスタンスは。また、原子力国論形成に関する考え方と決意を聞きたい。

細野 そうしたポジティブな取組みは、原子力関連施設が数多く立地するという特色を踏まえた、ユニークな地域構想として高く評価しており、「地域と原子力の共生」を図る上で、全国的なモデルケースにもなるものと期待している。経済産業省としても、積極的に協力していきたい。

また、内閣府において原子力政策大綱の見直しの議論が進められており、経産省としても、エネルギー基本計画等を踏まえ、今後の検討に積極的に貢献していく。

いずれにしても、経産省としては電気事業者等と連携しながら、エネルギー基本計画に示された具体策の実現に向け取り組んでいく。とりわけ、日本の原子力産業や原子力発電に関する制度・政策を企画・立案するに当たり、「世界標準」への適合、さらには世界標準策定における主導権獲得を念頭に、内外一体の原子力政策≠展開していきたい。

 (本シリーズ最終回)


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