UAEの国際諮問審議会 初の評価報告書を公表

自らの原子力発電開発利用計画を外部専門家による評価にかけるため、アラブ首長国連邦(UAE)政府が設置していた国際諮問審議会(IAB)が8日に初の半期報告書を公表した。連邦原子力規制庁(FANR)や連邦原子力会社(ENEC)の機能を高く評価する一方、燃料供給体制への取り組みや国際レベルの原子力賠償体制の整備を急ぐよう勧告している。

IABは昨年2月、原子力発電所の運転における安全確保やセキュリティ、核不拡散など、原子力開発利用のあらゆる側面で国際的に最も厳格な基準を遵守していくためには、国際社会で認知された優れた専門家の卓越した知見が有益との判断から設置された。議長を勤めるH.ブリックス国際原子力機関・元事務局長を含め、服部拓也・原産協会理事長など総勢9名が委員に指名された。

〈評価の高い事項〉

IAB会合では、委員達がFANRやENECを含めたUAE側原子力関係者と協議。同連邦の原子力開発利用プログラムの進展状況について、(1)安全性(2)セキュリティ(3)核不拡散(4)透明性(5)持続可能性――の観点から評価した結果、UAEがFANRおよびENECの役割と責任事項を明確に分けるなど、安全確保を最優先に両機関を設置したことは明らかだとした。また、FANRが規制条項を策定する際、外部からの圧力を受けずに意志決定が可能であるなど、規制上の独立性と能力を有していると判断。ENECについても、確固たる安全文化の醸成に取り組んでいることが裏付けられたとしている。

持続可能性に関しては、ハリファ科学技術大学と連携して米国、英国、仏国、韓国の大学にスカラシップ制度を設けるなど、人的資源の開発に取り組んでいる点を評価。透明性という点については、IABの設置自体がすでにUAEの努力姿勢を示しており、その報告書を公表したということからも透明性への配慮が伺えるとした。

〈IABの勧告事項〉

一方、同プログラムへの勧告としては、燃料の長期的な手配や廃棄物管理を含めた統合的な燃料サイクル戦略の開発が不十分だと指摘。使用済み燃料の管理や廃止措置で必要となる経費の調達も含めて一層の取り組みを促している。

また、国民への周知活動では立地地域の周辺住民を対象としたプログラムも必要だと提言。人的資源開発についても、原子炉の建設・運転・メンテナンスに要する人材だけでなく、原子炉の安全性を独自に分析する能力や技術的な科学研究分野にも育成範囲を広げるべきだと指摘した。

IABはさらに、UAE政府が核物質や機器、原子力技術などの輸出入で必要となる包括的な枠組みとなる法体系の整備を一層加速する必要があると強調。原子力損害賠償に関する法整備についても、ウィーン条約など既存の規定と整合性の取れた体制を設置・実施すべきだとしている。


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